お米を沢山食べれば食料自給率は上がるか?

なんだか胡散臭いお話です。


 

お米たくさん食べる→減反不必要→自給率上昇 首相語る

2008年06月02日00時15分

 福田首相は1日、首相公邸前で記者団に米の減反政策について問われ、「たくさんお米を食べて、減反をしないで済むようになれば自給率は自動的に上がる。まずはそれをやりましょう。できることからやりたい」と述べた。町村官房長官は5月31日に「減反政策を見直していく必要がある」と語ったが、首相は政策見直しには言及しなかった。
   

 一方、5月30日に発足した自民党食料戦略本部の本部長を務める加藤紘一元幹事長は1日のフジテレビの番組で「お米は余っている。それよりも大豆や小麦を作らないといけない。『農業は米だ』というこびりついた発想だ」と町村氏の見直し発言を批判し、自給率の低い大豆や小麦などの安定確保のため、国内生産のあり方や輸入ルート確保策の検討が必要だと指摘した。

まず現在、自給率向上の足かせになってるのは何か?農林水産省ホームページで公表されているデータを見てみよう。
ここでリンクしておいたのは結果の概要版なので、データの導出過程はあえて問題にしない。

これによると、昭和35年から平成18年の間に、食事からとるカロリーは上位4項目(1,667
kcal/2,548 kcal)では次のように変化している。

     
  • 米        :1,106 kcal → 585 kcal (-52l kcal)
       
     
  • 畜産物     :    85 kcal → 394 kcal (+309 kcal)
       
  • 油脂類     :  105 kcal → 368 kcal (+263 kcal)
  • 小麦       :  251 kcal → 320 kcal ( +69 kcal)
       
     

なるほど米の消費が半減して、それを上回る熱量が主に畜産物、油脂類、小麦でまかなわれていることが分かる。

この変化は、一言で言えば「欧米化」と言えるだろう。・・・つまり、首相は、おかずを減らせと言ってるのですね(個人的には、
大きなお世話、だと思う)。たしかに、脂肪の摂りすぎは体に良くない。だが、
お米中心の食事でおかずの量を減らすと塩辛いものが食べたくなるのではないか?高血圧患者が増えなければよいが。

このあたりの関係は、厚労省の持っている死亡原因のデータと、
農水省の持っている食生活の変化のデータをつきあわせると相関が出るかもしれない。

しかし、落ち着いて考えてみると、現状では米以外の農産物はほとんど輸入依存なので、
米だけ消費を増やしても他の国産農産物の消費が減って輸入の比率はそのまま、
と言うことではパイが小さくなるだけで生産者にはメリットがない。何のための自給率向上なのか、
と言う議論の前提を整えないと何をやっているのか分からなくなる。とりあえず、
コメだけ食べていれば食料自給率が上がることは間違いないのだが。

最後に、かつて日本人がどのくらいコメを食べていたか、宮沢賢治に証言してもらおう。


  雨ニモマケズ

  風ニモマケズ

  雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ

  丈夫ナカラダヲモチ

  慾ハナク

  決シテ瞋ラズ

  イツモシヅカニワラツテイル

  一日ニ玄米四合ト

  味噌ト少シノ野菜ヲタベ

  アラユルコトヲ

  ジブンヲカンジョウニ入レズニ

  ヨクミキキシワカリ

  ソシテワスレズ・・・・

1日に玄米4合というのは、当時、つましい食事の部類だったのでしょうかね。

ちなみに炊飯玄米の含水率は60%、乾物率は40%。炊飯前の玄米の含水率はだいたい13%、乾物率は87%。
玄米1合の重量は150 gなので4合の乾物重は、600 g x 0.87=522g、
飯としては炊飯すると2.5倍の重量になるので、1,350 g。カロリーで言えば、2,228 kcal。
昭和35年の総摂取カロリーが2,291 kcalなのでほぼ匹敵する。

ちなみに白米の場合、1,350 gで2,268 kcal。糠の繊維質が無い分若干、高カロリー。


賢治さんも、「欲ハナク」といいつつも、3食450 gずつご飯を食べるというのは、実は相当な食欲ではないですか?
茶碗1杯が160 g程度なので、毎食3杯。

朝から茶碗飯を3杯食えと言われても、私にはきついものがあります。ちなみに、450 gのごはんというと、
このくらいの分量になります。ちなみに我が家は麦13%位の麦飯です。試しに食べてみます。頂きます・・・

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・・・ごちそうさまでした。かなり満腹です。ほとんどおかずが食べられませんでした。告白しますが、これを毎日というか、
毎食続けるだけの根性が私にはありません。稲作農家の皆様、ごめんなさい。私はおかずも食べたいのです。
日本中がこんな食生活になると、畜産物や水産物の消費量全体が激減するので、
畜産業や水産業に従事している方々が間違いなく干上がってしまいます。結局、長期的には肉や魚の輸入比率が上がるのではないでしょうか。

おかずをほとんど食べないと言う前提だと、こんな風になるんですね。減反を緩和するために皆さんご飯を食べましょう・・・なんて、
総理や官房長官がどう言おうと、私にはとても言えません。

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