世間では次期アメリカ大統領にオバマ氏(何度打っても小浜市になる・・・)が選出されたニュースでもちきり。

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ニュースサイト"technobahn" より。記事の見出しは
降雨が多いと自閉症の発生件数も多くなる、米研究者
記事本文はこちら

どこがダメか?記事には次のようにある。
”教授を中心とする研究グループは1987年から1999年にかけてのカリフォルニア州オレゴン州ワシントン州での自閉症児の発生件数と降雨件数との因果関係に関する調査分析を実施。その結果、降雨件数が多いと学童児における自閉症の発症件数も増えるという明らかな因果関係があることが判ったとしている。”

オリジナルの論文はこちら。残念ながらご家庭ではAbstractしか読めません(・・・読まないか)。
論文にはこうある。
"County-level autism prevalence rates and counts among school-aged children were positively associated with a county's mean annual precipitation."

”年間平均降水量降水量と学童の自閉症の有病率には、正の相関がある”と言っているのみ。

因果関係と相関関係を一緒くたにしてはいけない。事実関係としては”降水量が多い地域では学童の自閉症の割合が高い”という観察結果が得られたということと、”降水量が多いと、そのせいで自閉症になる”ということは違うのだ。

上記のケースで”正の相関関係がある”というのは、言い換えれば、”学童の自閉症の割合が高い地域では降水量が多い”でも、”降水量が多い地域では学童の自閉症の割合が高い”でも算術的には同じこと。二つの変数の一方が増えれば他方も増えると言う傾向があると言うに過ぎない。

因果関係となると、例えば”降水量を増やすと必ず(あるいは高い確率で)学童の自閉症の有病率を増やせる”あるいは”自閉症の学童を集めると、降水量を増やせる”という関係にある場合を言う。

二つの変数の間に、原因と結果という関係性が(場合によっては実験的に)証明できない場合には、因果関係と言ってはいけない。ましてや脳機能と気象の間には様々な媒介があって然るべきなので、単純な因果関係は非常に成り立ちにくいと考えられる。

本当に”降雨件数が多いと学童児における自閉症の発症件数も増えるという明
らかな因果関係があることが判った”というのであれば、センセーショナルなのだが記者の早とちりでニュースにするのはいかがなものか。

ちなみに、上記の論文では”California, Oregon, Washington”の3地点を対象に調査をしている。従って、観測地点の緯度から考えれば、降水量の代わりに平均日照時間でも夏場の平均気温でも同じような相関関係が導かれる可能性が高いのではないだろうか。気象条件と人間の脳機能の関係については、これ以外にも季節性気分障害(Seasonal affective disorder, たとえば冬季性うつ病)のように日照時間の影響があることはよく知られている。緯度と冬季の日長には相関があるので、上記の3地点での比較においても必ず変数としては関与しているはずなので、年間降水量をなぜフィーチャーしたのかは結構謎だ。他の変数よりも圧倒的に信頼性が高いということがあったのだろうか。

記事の論評ではなく、論文についてのコメントになってしまったが・・・。
# いや、ダメな論文について書かれたダメな記事だとは思いたくない。それではあまりに情けない。