島津製作所から微量測定用の分光光度計

石英セル不要で微量の核酸水溶液の濃度を測る分光光度計では、NanoDropNanoVueが先行しているが島津製作所からも同様の機能を持った分光光度計が発売された。
BioSpec-nanoというもので、定価ベースで130万円位とのこと(競合製品よりも30-40万くらいお買い得です)。

競合するNanoVueは本体だけで計測できるPC要らずのところが良い(PCがないので当然、起動も速い)。NanoDropは設置スペースが極小なところがよい。ただ、どちらも石英セル+ホルダーに相当する部分が可動式なので光路長の安定性は大丈夫なのか?という機構になっている。

BioSpecは光路長を決める石英セル+ホルダーに相当する試料導入部位が可動式なのは他の製品と一緒なのだが、他の製品ではそこが手動なのに対して機械式になっている(・・・ので反復精度は高いかも)。設置場所のフットプリントはPC外付けなので、他のものより大きい。

PCとの接続方式は不明。USBなら格安のネットブックでも制御できるので導入コストも安上がり(今時、RS-232CだのGP-IBの如き化石のようなインターフェースは勘弁していただきたい)。ただし、ソフトによってはディスプレーの解像度が低いと操作メニューが画面からはみ出すことがあるので購入時には要確認。

BioSpec-nanoのもう一つのウリは、”自動拭き取り機構”らしい。測定終了後に液滴を自動的にぬぐってくれる。後片付けの手間が要らないので"measure and forget"と言う案配だ。ありがたい機構なのだが・・・なんなく横着。

個人的には、可動部分が多い機械は壊れやすいと信じているので、このメカはオプションにしてもう少し安くした方が良かったのではないかと思う。光源がキセノンフラッシュランプと言うところはGood(NanoDropもそうだけど)。十数年前までは、UVとVISの光源が別々で、UV用は水銀ランプというものが多かったのを思えば時代を感じる。水銀ランプと違ってほとんど劣化しないし。

ちなみに、スペックは、

  • スペクトルバンド幅は3 nmなので分光光度計としての性能を追求した製品ではない(NanoDropと一緒。NanoVueは5 nm。核酸専用と考えれば十分なスペックだが)。
  • 光路長0.2mm:1〜75 OD (50〜3,700 ng/μL)
  • 光路長0.7mm:0.3〜21 OD (15〜1,000 ng/μL)

とのこと。

このスペックを見て思ったのだが、数十ng/μLの濃度のDNAを計る必要がある場合は、LEDを光源にした簡易型の蛍光光度計(InvitrogenのQubit)の方が高感度(100 pg/µL-1µg/µL)。二本鎖DNA特異的な蛍光色素を使えばプライマーやヌクレオチド・モノマーの影響を受けずに定量できるし、本体価格も安いので消耗品扱いで買える(ピペットマン3本分くらい)。

ほとんどおもちゃのようにチャチな製品なのだが、実際に使ってみると測定精度はなかなか侮れない。十分実用に耐える水準だ。

Qubitの場合、バッファー、蛍光色素に測定用チューブがサンプルごとに必要な消耗品だ。二本鎖DNAを計る測定レンジの広いキットの場合、定価ベースで1サンプルあたり\72の消耗品が必要。18,055サンプル測定するとBioSpec-nanoの本体価格と同じ約130万円になる。

これは年間900サンプルの測定で20年分以上にあたる(ちなみに、私は1年間で100サンプル用のキットは使い切ったが、300サンプルまで計っていない)。それ以下のサンプル数しか計らないのであれば、130万円の装置を買う価はあまりない様に思う(20年以上使うのであれば話は違いますが)。

# あれれ、分光光度計の紹介のつもりだったのだが・・・。



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