感染研から季節性インフルエンザに関する、定例のインフルエンザ流行レベルマップが公表されたこれによると、

2009年第19週のインフルエンザの全国レベルでの定点当たり報告数は、1.68(報告数7,963)となり、3週連続で減少した。

患者数は報告数よりも多いと考えられるので、5月4日〜5月10日の1週間の感染者数だけで8,000名ほどは、”旧型”インフルエンザに感染していることになる。

これらの患者さんのうち、糖尿病や腎臓病などの慢性疾患を抱える方と、妊婦さんは重症化のリスクが高い点は、新型インフルエンザも旧型も同様であると考えると、新型だけ入院して治療を受けることができるというのは如何なものだろうか。ちょっとアンバランスな対応だと思う。

この記事も、ある意味注目。

「日本はモデルケース」WHOが注目 新型インフル

2009年5月19日10時9分


 【ジュネーブ=田井中雅人】 新型の豚インフルエンザの感染者急増への日本の対処法に世界保健機関(WHO)が注目している。途上国に比べて検査態勢や医療態勢が充実している日本での急増だけに、未知の病気との戦いのモデルケースになるとの指摘が出ている。


 WHOで新型インフル対策にあたる進藤奈邦子医務官は「(患者が急増している)神戸や大阪は検査・報告態勢がしっかりしており、学校閉鎖やイベント中止などの措置がきちんととられている。日本については、感染拡大で危機的状況になるような心配はしていない」と話す。


 さらに進藤氏は「日本で数多くの治療経験を重ねるなかで、どういう人が重症化するかや、危険因子があるのかといった、未知のウイルスについての情報も集まる。世界に先駆けて新型インフルに対処するモデルケースとなりうる」と期待を口にする。


 最近のWHOの専門家らの注目は、英国、スペイン、日本の3カ国だ。海外渡航歴がなく、だれからうつされたかわからない「地域社会レベルの持続的感染」
が、米州以外で確認されれば、警戒レベルを現在のフェーズ5から最高度の6(パンデミック)に引き上げる要件が整うからだ。


 英国やスペインは「感染者の大半は北米への渡航歴があり、持続的感染にはあたらない」と主張。感染確認者数が急増する日本に注目が集まる構図になっている。

”モデルケース”といっても、こういう場合は”模範となる”という意味合いは薄いように思う。検査体制や医療水準で言えば、アメリカやカナダだって整っている。日本のケースがアメリカやカナダと際立って違うところがあるとすれば、

  1. 最初の感染源が”ピンポイント”に近いほど小数であるため、国内の地理的な感染の拡散が追跡可能
  2. 検査技術が普及しており、感染拡大初期の状態ではかなりの高頻度のサンプリングが行なえる
  3. 現場からの感染報告が律儀に行なわれ、信頼性の高い統計的データが政府のレベルで収集される
  4. 保険制度が整っていて(他国と比べればと言う話だが)、慢性疾患の患者さんが治療されずに放置されているケースが少ないので、余病がある場合の新型インフルエンザの転帰の高精度のケース・スタディーができる可能性が高い

ということだ。疫学研究者から見て、非常に質の高いデータが集まる絶好の(・・・と言ってよければだが)機会であるという意味では、モデルケースなのだろうが、決して理想的な治療が受けられるという意味ではない。見出しの先頭に”モデルケース”と書いてあると無邪気に喜んでいる記事のようにも見えるのだが、それほど暢気な状況ではない。

・・・ではあるが、このところ、高校生くらいの”体力のある感染者”が増えているようであるし、集中的に治療する体制が整ってきているので、日本ではこのウイルスによる感染症の致死率は、WHOの公表した2%くらいという値を大きく下回ることになるのではないだろうか。

# ところで、WHOの皆様は、”モデルケース”と持ち上げておけば、几帳面な日本人の国民性から言って「感染性も、感染した場合のリスクも季節性インフルエンザと同じなら、わざわざPCRで確定診断なんてしなくたっていいじゃん。めんどくさいし。」・・・と、流行期の途中で言い出さないだろう、という目算もあるんでしょうね。当然のこと保険適用外だが、患者の依頼でする検査ではないので患者負担は\0。確定診断は全額税金なのだよね。PCRで確定診断するのに、1検体幾ら投入されるのだろうか。

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 本日22時現在の新型インフルエンザ感染例は178名(成田検疫の4名を含む)。5/16のヒト-ヒト感染国内初確認から4日目。

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