食品中の残留農薬試験法の現状について

お茶の水女子大学LWWC108−7

本日のお題は「食品中の残留農薬試験法の現状について」。講師は国立医薬品食品衛生研究所食品部 根本氏。

講義内容は、ポジティブリスト制移行後の食品中の残留農薬試験法と分析法の評価、残留農薬に対する監視指導について。

食品中の残留農薬ポジティブリスト制とは、食品中に残留するあらゆる農薬等(動物用医薬品、飼料添加物添加物を含む)に対して量的基準を設定して規制する制度。

残留の基準は次の3つのカテゴリー。

  1. 人の健康を損なうおそれの無い量(一律基準)
  2. 規格が定めれれた量(残留基準、暫定基準)
  3. 人の健康を損なうおそれの無いもの(対象外物質)

これらの基準の設定の元になった考え方について説明があった。残留基準はわが国でリスク評価を終えたもの、暫定基準は評価待ちだが、外国での評価実績があるもの。一律基準は海外でもマイナーな農薬と、移行によって想定外に検出されてしまう例に適用される。
一律基準0.01ppmの設定は、

  • まず、WHO/FAOの合同食品添加物専門家会議における香料の評価等を引用し、許容される暴露量と1日摂取量を決めた。
  • その妥当性の裏づけとしてわが国の食生活の実態を照合すると、単一の食品を1日150g以上摂取するのは米のみで、
    米は国内流通を基本としており既に農薬取締法の規制の下管理されているところ。
  • また、ADIが0.03μg/kg/day未満の農薬等には不検出基準が適用されるので一律基準はこれで十分。

とのこと。

これらの基準に基づき、二種類のカテゴリーの検査方法を設定した。即ち「不検出基準」に対応した「告示試験法」と「それ以外の基準」に対応した「通知試験法」である。最近よく聞く一斉検出法は通知試験法に当たる。なお、通知試験法には洒落た規定があって「通知試験法と同等以上の性能を有する試験法の使用を認める」ことになっている。つまり、日進月歩の分析法を取り込んでいける用に配慮されている。現在、LC/MSやGC/MSなどを利用した一斉試験法は7種、個別試験法に至っては217種が通知されている。検査対象となる農薬がポジティブリストで指定されたのだから検査法もそれに対応して、てんこ盛りになっていくというわけだ。これは、検査する方も大変です。

実際の検査体制は検疫所と都道府県が主体で、輸入食品は検疫所、国内流通の農産物については都道府県が分担することになっている。で、講義の最後に私から質問。

Q: 最近の分析装置はLC/MS,GC/MSなど、どんどん高性能になっており、規制もそれをふまえたものになってきている。
一方で、分析機器は非常に高価になってきているのですが、機器の整備はにあたって自治体を支援する制度はないのでしょうか?

A: 特に支援制度はない。食の安全を担保する責務は自治体にもある。施策の優先順位として重要であると考えるのであれば、財源を確保するべき。一部の自治体では体制整備に苦慮していると聞き及んではいる。

・・・だそうです。

規制行政のような全国一律の施策に対して、自治体が対応する場合、”最低限”の設備費・運転経費・人件費は人口100万人を切る鳥取県島根県でも、1千数百万人超の東京都でもあまり変わらない。
検査に関わる経費全体は検査点数に応じて変わる可変部分が大きいのだが、その一方で小さな県は大きな自治体の1/10の固定経費でよいということにはならない。人口の少ない自治体にすむ国民の安全は、それなりでよい、ということには決してならない。

一方で、施策の優先順位について自治体のフリーハンドに委ねるのが地方自治の考え方なので、
自治体としてそう判断するのであれば国がとやかく言うことではないということだろうか。

私はここに、ダブルスタンダードを見る。食品衛生法ガイドラインではない。規制法だ。違反すれば罰則もある。だが、その一方で強制力を持った法の執行に必要な技術面での担保を、自治体任せで良いとどうして言えるのだろうか。

# 例えば、うちの県はスピードガンが買えないので、ネズミ取りはやりませんという県があったらどうだ?

「仏作って魂入れず」という言葉を噛みしめながら、この問題を記憶にとどめたい。

 



 

本日の見聞

13時30分−15時30分、つくば市の「遺伝子組換え作物の栽培に関する情報交換会」を傍聴した。”反対派”の宇野委員は意見のポイントが会の設置の趣旨に沿わず、事務局のつくば市産業部長?からも再三釘を刺される。

座長も栽培計画を”審査、審議”するかのような発言をしており、これも田部井委員から、適切でないと修正を求められていた。

農業者の委員からは、ハーベスターの清掃のポイントはきちんと押さえるべき、あるいは、合衆国でも何百万町歩作付けされて問題になっていない作物を、こういっては失礼だが、こんなみみっちい試験栽培をするのに反対のどうのというのは如何なものか、という主旨の発言があった。