3年で変わる行政官?いや、普通2年くらいです。

話題になってるので、悪のりです。

研究プロジェクトの企画立案に大きな影響力を持つ中央省庁の課長・室長ポストは、3年も同じ場所に居るのは長い方です。
猫の目行政とおっしゃる向きもありましょうが、担当官の入れかえは概ね2年。
プロジェクトの方が短くても1.5倍長持ちするので3年でプロジェクトが入れ代わるのは、そのせいではないと思います
(私も元やとわれ行政官のはしくれですので、その辺の事情はわかります)。

また、プロジェクトは1期、2期とバージョンアップします。その際に、専門家集団(概ね同業の研究者)の評価で、
成績の良い課題は継続、いまいちの課題は入れ替えと言う具合に篩に掛けられます。
そこでピアレビューの結果残れなかった課題はそれまでのこと(ピアレビューが万能とは思いませんが、
役人が勝手にさじ加減しているわけではありません)。入れ替えないでずるずる続ける方がよっぽど無責任で放漫です。

# その一方で、山中教授の研究や、その下流に当たる器官分化制御関連の仕事に、緊急的に数百億の予算を付けたら、
世人はそれは猫の目とは言わず「機動的」と言うのでしょうかね。一方で、原資は限られているので、研究予算を召し上げられて、
失職する人も出るかもしれません。

国が配分する研究費の流れ(uneyamaさんも書かれていますが、
ライフサイエンス予算の勧進元文部科学省ライフサイエンス課が大半で、厚労省に文句を言うのは筋違い。)も、プロジェクトの企画立案も、
市民の目からはこんな風に見えているのかと思うと、行政の側も市民とのコミュニケーションを本気で考えた方が良いかもしれません。

さて、Timesの記事の一件ですが、ヒト胚性幹細胞を使った研究に政府資金を投入してこなかった米国ならともかく、
日本では許認可の条件が厳しいとはいえ胚性幹細胞を使った研究自体可能でしたし、京大再生研はその急先鋒でしたので、
Timesの記者が書いたような攻撃的なコメントを山中先生がしているとは思えません。
アメリカの研究所の教授も兼任された山中先生はそちらの事情もよくご存じのはず。

ところで、アメリカと日本とでは体細胞由来の幹細胞の開発に対する根本的な原動力が違ったはずです。
かたや政府資金の大量投入は全面凍結、方や条件付き・それほど多額ではないものの分野ごとの予算としては、それほど少なくはない。
アメリカの原動力は予算獲得のための倫理的なブレイクスルー。日本での原動力は?私はこう考えます。再生医療
移植医療の大本命は移植後の免疫抑制のいらない自家移植へと移っていくと考えられます。臨床畑出身の山中先生であれば、
臨床応用のしにくい他家移植を技術の中心に据えるとは考えにくい。そうなると、患者さん自身の体細胞由来の幹細胞へのシフトは技術的必然。・
・・と。

いずれにしても、”初期化”の次のターゲットは分化誘導、再プログラムです。また、初期化自体にもまだ研究の余地は大いにあって、
一過性遺伝子発現で体細胞の初期化ができるのであれば、
ゲノムに組み込まれてしまうレトロウイルス以外のベクターも考慮するべきかもしれないし、
初期化に関わった遺伝子の日米の研究での違いも考えなくてはならない。その辺のテーマの配分、
力加減はその分野の研究者の腕の見せ所でしょう。

また、これまでは生命の始原である(・・・かどうかは、まだ議論があるのですが)受精胚を破壊することから、
倫理上の制約からES細胞の樹立、配分に規制がかかってきましたが、これからのルール作りはまた別の視点から行われることになるでしょう。
総合科学技術会議の動き、議長である福田首相の諮問に注目が集まります。

 

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