薬害C型肝炎訴訟救済へ立法措置

現行法の枠組みから外れることのできない司法にも、行政にもできないことが、国会にはできます。
日本経済新聞によれば、自民党総裁が薬害C型肝炎訴訟被害者救済に向けて議員立法を呼びかけたとのこと。

数日早ければもっと良かったのですが、これはすばらしいニュースです。


薬害肝炎訴訟、首相が一律救済表明・原告団「大きな一歩」

 福田康夫首相は23日、薬害C型肝炎訴訟に関し、被害者全員を一律救済する方針を表明した。自民、
公明両党が今国会に議員立法で救済法案を提出、野党にも協力を呼びかけて早期成立を目指す。原告・弁護団は同日、
「大きな一歩であると評価し、解決につながることを期待する」との声明を発表した。

 政府はこれまで原告側が求める一律救済に消極的だったが、原告側との和解協議の事実上の決裂を受け、
政治決断で早期収拾を図ることにした。

 首相は首相官邸で記者団に「私は自民党総裁として、薬害患者の方々を全員一律救済するための議員立法を党との相談の結果、
決めた」と明言。そのうえで「一刻も早く立法作業を進め、野党の協力も得なければいけない。可及的速やかにこの法案を通してほしい。
1日も早く皆さんに安心してほしいと思う」と強調した。 (20:56)

阪高裁の和解勧告案において政治家に投げかけられた「所見」を受けての対応とお見受けします。
民主党の皆さんも、このような案件を政争の具にすることだけは避けていただきたいものです。・・・というか、
人の不幸を利用する様ではありますが、与党に先駆けて、
自民党に対していち早く議員立法を呼びかけていれば国民に大きくアピールできたのにね。

しかし、日本経済新聞の見出しは何なんでしょうか。福田さんが「私は自民党総裁として、」と言ってるのに「首相」
という肩書きを書くのはどういうことなんでしょうか。

事の経緯は、行政府の長である福田総理大臣は、
和解勧告案から大きく踏み出して現行法を超えた対応はできないので、大阪高裁の和解案の骨子に沿って救済策を打ち出したが、
原告側はそれで納得しなかった。そこで、司法の場でも解決できず、行政府も十分な手当ができない状況になったので、
立法府の出番ということで、与党の代表である総裁が議員立法を呼びかけたという構図なのですが。なので、同一人物ではありますが「与党総裁」
の立場で議員立法を呼びかけている以上は、見出しも「福田自民党総裁」と書くべきでしょう。

 



 

さて、法律は実行部隊である官庁を動かせなければ、絵に描いた餅も同然。薬害救済であれば、
厚労省本体か独立行政法人 医薬品医療機器総合機構が実行部隊になるのだろうか。

救済の対象は、これまでの薬害肝炎に関わる裁判において、国の過失の認められなかった「薬害による」
C型肝炎患者になるだろうか。例えば、C型肝炎の感染の時期を特定し、その期間に問題となっている血液製剤が投与された
(あるいは投与が合理的に推定される)患者全体を”特定C型肝炎患者”とでも定義するのだろうか。そうしないと、
血液製剤とは関係のなさそうなC型肝炎の患者が救済の対象に含まれる事になるし。

救済の方法はどうするのだろうか。原告の皆さんは一律救済と言っていますが、金銭面での一律な支給は不合理です。
なぜならば、感染時期もまちまちですから、これまで治療にかかった費用の弁済も人によって異なるはずです。また、
必要な医療費や通院の経費は人によって違います。インターフェロンが効く方もいれば、ウイルスの型によっては効かない方もいるでしょう。
副作用の方が重篤インターフェロンの投与に耐えられない方もいるでしょう。ですから、支給される金額については、
これまでの費用を弁済するための感染時期に応じた一時金と、これから実際に治療に要する費用負担(完治するまで、
あるいは完治しないで生存している間。)という、二本立てになるのではないでしょうか。

それでも、原告団の皆さんは”命の重さに区別はない”という理由で、一律の条件(金額)
の救済を求めるかもそれません。でも、本当にそれでよいのでしょうか?今後、貨幣価値は変動するかもしれませんし、
治療法だってインターフェロンよりももっと高額だけれども、もっと効果が高いものが出てくるかもしれません。今の様な要求を続けても、
国から救済のための一時金を一括で引き出せるかもしれませんが、それで終止符を打たれるてしまえば、
将来補償を受ける権利を放棄することになるかもしれません。あまり、”一律”にこだわると、
かえって補償を値切る口実を与えてしまう恐れもありますので要注意です。

 

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