エボラウイルスを飼い慣らす

東大医科研の河岡先生達のチームの仕事。


エボラ出血熱の原因ウイルス、東大チームが無害化に成功

 致死率が90%にも達するエボラ出血熱の原因であるエボラウイルスを遺伝子操作し、
特殊な細胞の中でしか増えない安全なウイルスに改造することに、河岡義裕・東大医科学研究所教授らの研究チームが世界で初めて成功した。


 エボラウイルスは、外部と隔離された実験室で極めて厳重な管理のもとで取り扱わなければならず、
これが治療薬開発などの研究が進まない主因になっていた。この改造ウイルスを使えば、通常の実験室でも研究が可能となり、
今までなかったワクチンの開発などが大きく進む可能性がある。近く米科学アカデミー紀要電子版に発表する。

 研究チームは、エボラウイルスの増殖にかかわるたんぱく質「VP30」に着目。カナダにある特別な実験室で、
このたんぱく質を作る遺伝子を取り除いた改造ウイルスを作製した。次に、この改造ウイルスを通常の細胞に感染させたが、
1週間たってもまったく増えず、反対に、VP30を作り出す特殊な細胞の中では増殖した。

 河岡教授は「改造ウイルスは、増殖にかかわるたんぱく質が作れないこと以外は、実際のエボラウイルスと同じ性質を持っている。
このウイルスを使えば、安全に治療や予防の研究が行えるだろう」と話している。

(2008年1月22日10時34分  読売新聞)

「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(カルタヘナ法)の二種告示では、
エボラウイルスは実験分類クラス4の扱い(天然痘ウイルスなんかと同じ扱い)。今回の実験では、
VP30の欠損株ということなので増殖力欠損株だが、二種告示に特別に実験分類を引き下げる項目(ワクチン株や、
レトロウイルスと同様のケース)がないので、実験分類クラス4のまま。単純な欠損型ウイルス使用する場合も、
ナチュラルオカレンス扱いできない場合は(多分無理だろう)、二種省令別表第一第一号ロ(宿主又は供与核酸が実験分類クラス4)
が適用されるため、大臣確認実験になる。

HEK293細胞&アデノウイルスのケースと同様、自立増殖できないことが科学的に証明されたとなれば、
二種省令別表第一第一号へ(自立増殖性のウイルス)は適用されない可能性はある。

一方、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症予防法)では、
エボラ出血熱は1類感染症で、エボラウイルスは第一種病原体等。従って、原則所持、輸入、譲渡は禁止(例外措置あり)で、
最も厳しく規制されている。罹病した場合の致死率が非常に高く、二次感染性も高いので野生株は非常に危険だから当然の措置か。

ただし、
RNAそのものやエボラウイルスゲノムをコードしたDNA断片を持つベクターを規制する法律は多分ないので、
国際間の核酸の移動はフリーパスだろう。また、マイナス鎖RNAウイルスなので、
多分いくつかのタンパク質あるいはプラス鎖RNAを補ってやらないと、
細胞にベクターを導入しただけではそう簡単にウイルス粒子はできないとは思うが。

・・・ということで、実験上の安全は確保されたとは思う一方、国内で実験しようとすると文部科学大臣
厚生労働大臣(手続き上は環境大臣も)の許可を取らないといけないので、敷居は高そうです。

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