高速アガロースゲル電気泳動
実験の小ネタ紹介。いずれ書きたいと思っていたネタです。
以下に紹介する核酸のアガロースゲル電気泳動の方法は次の状況が当てはまる方にはお勧めしません。
- TAEやTBEで不自由していない方
- 1kb以下のDNAフラグメントを頻繁に電気泳動するけれども、時間には不自由していない方
- キャピラリータイプの全自動電気泳動装置が使えるリッチな方
- ミューピッドしか使いたくない方
逆に、次の状況が当てはまる方にはお勧めします。
- とにかく速く泳動したい方
- マイクロサテライトの泳動など、TBEバッファーでは高温でゲルが溶けちゃいそうな方
- お金が無くてトリスが買えない方
- 電気泳動槽に緩衝液が常に入れっぱなしでちょっとくらい蒸発してもどうって事無いぞ、という豪傑な方
方法は簡単です。TAEの代わりに、酢酸リチウム(LA)、ホウ酸リチウム(LB)、ホウ酸ナトリウム(SB)など、
トリスを含まない電極液で核酸の高速電気泳動ができます。(カチオン濃度がキモなので作るときにはNaOH,
LiOHの濃度を固定しておきます。)
できあいの状態の濃縮緩衝液も市販されています。国内代理店はフナコシ。
特に、1-10mM ホウ酸ナトリウム緩衝液は、TBE用にホウ酸を買い込んでるラボの方にはお勧め。
1Nの水酸化ナトリウム液にホウ酸を入れてpH8.0にあわせてできあがり(標準的レシピでは泳動時のfinal 5mM NaOH,
ストックは20xで1N NaOH)。特別な試薬は要りません。ミニゲルを250-300Vくらいで泳動しても温度がほとんどあがりません。
速い、安い、分解能よし(大抵の場合は)、で文句なしです。また、泳動時のカチオン濃度を1mMで調整しておけば、
ちょっとくらいバッファーが干上がっても、それほど大きな影響はないはずです
(ゲルと泳動バッファーの濃度差が大きいと何か妙なことが起きないとも限りませんが・・・)。
ただし、塩濃度の高い緩衝液で制限酵素処理した場合は、泳動像がゆがんだり、
マーカーと比べてサンプルの泳動が遅くなるかも知れません。泳動用の緩衝液の塩濃度が非常に薄いので、
試料の塩濃度の影響を受け易くなっています。ほぼPCR産物の泳動しかしないと言うのであれば、問題はありませんが。
緩衝液の塩濃度や電気泳動のコンディションは原著論文で確かめて下さいね。
なお、私はSYBR GreenなどEtBr以外の高級なダイやMupid-Stain eyeなどで染色したことはありませんので、
関心がある方は自分で試してみてください。TAEより塩濃度が低い分、
緩衝液と核酸の電荷の違いが大きいので染まり方は相当違のでは無いかと想像します。
人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!