"ミートホープ事件"論告求刑公判 検察の主張はまともか?

読売新聞より。予め断って置くが、私はミートホープの弁護をする気はさらさらない。しかし、検察の姿勢には疑問を感じる。


食肉偽装 元社長に懲役6年求刑 地検「食の安全捨てた行為」

 北海道苫小牧市の食肉製造加工会社「ミートホープ」(破産)の食肉偽装事件で、豚、
鶏肉などを不正に混入した牛ひき肉を食品加工会社に出荷していたとして、詐欺と不正競争防止法違反(虚偽表示)
の罪に問われた同社元社長の田中稔被告(69)の論告求刑公判が5日、札幌地裁(嶋原文雄裁判長)であった。検察側は
「動機は利益を上げるためで、身勝手で自己中心的な犯行。『食の安全』を捨てた恥も外聞もない行為で、消費者に多大な不安を与えたのに、
反省の態度が十分ではない」などとして懲役6年を求刑した。公判は今年1月の初公判から3回の審理で、スピード結審した。
判決は19日に言い渡される。

 一方、弁護側は最終弁論で「会社が破産するなど事実上の制裁を受けている」と情状酌量を求めた。田中被告は最終意見陳述で
「本当に申し訳ない。深く反省している」と謝罪した。

 論告などによると、田中被告は昨年6月までの約1年間、北海道加ト吉など十数社に豚や羊などを混ぜた牛ひき肉計約138トンを
「牛100%」と偽り出荷。うち3社に出荷した約100トン分の約3900万円について詐欺罪に問われた。


(2008年3月6日  読売新聞)

冷凍肉の解凍に雨水を使ったと報道されたことが事実であれば、衛生管理上の問題はあった可能性はある。しかし、
検察側は”食品衛生法違反”には問うていない。不衛生であったことを物的証拠を以て立証できていないためだろうか。

上記の記事によれば、問われている罪名は「詐欺と不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪」である。要するに、
利益を得る目的で表示をごまかして客を欺いた、ということが犯罪にあたるということ。これは、
最終的には消費者の選択の自由を裏切る行為につながったが、事件の当時、
事業者間の取引にはJAS法の表示義務は適用されないことになっていたため、検察はJAS法違反を問うことができなかった。また、
消費者に直接販売する製品ではなかったので、不正表示を景品表示法違反にも問えなかったのだろう。

一方、食品衛生法についてなぜ罪を問うていないかはわからないが、衛生管理上問題があったかどうか、
業務方法を従業員等から聞き取ることで調査できるものの、
細菌汚染など衛生上の問題があったかどうかは物的証拠を押されられなかったため罪に問えなかったということだろうか。

原材料を偽ることは、アレルギーを起こしやすいなど健康被害に結びつきやすいものを除いては、
食品衛生上のリスクはないだろう。だから、おそらく、
アレルギーを起こしやすい食材を除いて原材料のすり替えは食品衛生法違反には当たらない。繰り返すが、私は、
ミートホープの肩を持つ気はさらさらない。しかし、検察の論告が「詐欺と不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪」
のみであるならば、「『食の安全』を捨てた
という検察の指摘は的外れだ。NHKのニュースでも「食の安全」という言葉を使っていたので、おそらく検察側がそう言ったのだろうが、
「食の安全」を争点にするのであれば、食品衛生法違反の疑いについても検察側は裁判の場で事実関係を明らかにするべきだ。

そこに何ら違和感を覚えないで「食の安全」と言っているのであれば、我が国の「食の安全」
を法律によってどのように担保するのかという問題についての検察の観点がずれている。もし、今回の事件でも、
実際に食品衛生上の危険性があったにもかかわらず食品衛生法違反で立件できないのであれば、
食品衛生法の罰則など画餅だと言って居るのに等しい。逆に、食品衛生上の危険性があったことを具体的に示せないのであれば、
検察は裁判の場で食の安全を脅かしたと言ってはいけない。それでは十分な証拠もなく難癖を付けているように見える。
発言に公正さを欠いている点では、まるでどこかの新聞社のようだ。

しっかりしておくれ。

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