PLoS One より。
Yi Zhang, John G. Turner 2008 Wound-Induced Endogenous Jasmonates Stunt Plant Growth by Inhibiting Mitosis.

盆栽にした植物の大きさはそうでないものよりも5%以上は小さくなる。それにストレスが関係していることはわかっているのだが、ストレスがどのように植物を小さくするのかが分からなかった。

モデル植物のアラビドプシスでは葉に障害をうけると、茎頂組織での細胞分裂が減り、数日以内に植物の生育が抑制される。新しい葉の大きさは通常の半分になるが、細胞の大きさは変わらず、その数が減少していることがわかった。

予想外なことに、茎頂での細胞分裂の抑制は、傷害ホルモンであるジャスモン酸 - 障害を受けた成熟した葉で合成されるのだが- によるシグナル伝達を通じておきる。ジャスモンサンに反応しない変異体(合成できないか応答しない)では、植物体は通常のものよりも大きいし、傷害ストレスに応答してな小さくなることもないとのこと。

http://www.eurekalert.org/pub_releases/2008-11/plos-tbe111108.php

を参考にしました

問題の所在は、”植物が小さくなる”ことのように考えがちだが、実は”植物が大きくならない”ことにある。大抵の器官・組織の細胞分裂は成長点付近で早い内に止まって、あとは細胞の伸長で器官・組織のサイズが大きくなるのだとすると、サイズが大きくならない理由は、

  1. 細胞が少ない
  2. 細胞が小さい

のいずれか(あるいは、その両方)だ。

1.の細胞数減少の結果として組織・器官が小さくなるのであれば、形態形成の時期だけ細胞数が増えないように制御してやれば、その効果は生涯続く。2.の仕組みで器官・組織を小さくしようとすると、植物が生長している間中ずっと細胞が大きくならないようなシグナルを出し続けなくてはならない。しかも、盆栽のように植物体全体が小さい場合には、そのシグナルは常に植物体全体に行き渡っていなくてはならない。これは、あまりにコストがかかる仕組みだ。ということで、この発見は植物の大きさの制御が結構合理的な仕組みで働いていることを示している。

各種のmutantでジャスモン酸の働きを追っているあたりは道具立てがアラビでなければなかなかできないことだ。

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