ブログ等で裁判員候補者に選ばれたことを公表している方が居ると報道されている。以下は、裁判員法より。

裁判員等を特定するに足りる情報の取扱い)

第百一条
 何人も、裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならな
い。これらであった者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報についても、本人がこれを公にすることに同意している場合を除き、同様とする。

要するに、裁判員候補者等の個人情報の公開は禁止する、と読めます。例外は、過去において裁判員候補者等(=”これらであった者”)であったことを本人(あるいはその同意を得た者)は公表できるということでしょう。

ですので、個人情報が特定できる者が裁判員候補者になったことを公表すると違法行為にあたります。裁判員候補者名簿は毎年更新される模様

裁判員制度のホームページでは、

裁判員候補者になられた方のプライバシーや生活の平穏を守るため,裁判員候補者名簿に登録されたことを公にすること(インターネット等で公表するなど,裁
判員候補者になったことを不特定多数の人が知ることができるような状態にすること)は,法律上禁止されていますので,ご注意ください。」

とありますが、その判断の法的根拠は示されて居らず非常に不親切です(いいのかそれで?)。

ちなみに、読売新聞によれば、裁判員候補者になる確率は今年は1/350とのこと。ずーっと候補者にならない確率は、有権者数が固定的であると仮定すると、

((350-1)/350)^n
* nは年数

裁判員を辞退できる年齢である70歳を一応の区切りとすると、20歳-70歳までの50年間に一度も裁判員候補者とならない確率は

(349/350)^50 = 86.7%

です。これが、30歳、40歳、50歳、60歳の場合はそれぞれ、89.2%、91.8%、94.4%、97.2%になります。今後、少子化の影響で有権者数が減ると予想されるので、生涯裁判員候補に一度もならない確率は有権者の母数が減る効果でこれより下がるでしょうが、概ね90%の国民の生活には何等影響を及ぼさない制度と言えるでしょう。

にもかかわらず、マスコミは非常に盛り上がっています。裁判員法の第1条、法律の趣旨には次のようにあります。

(趣旨)

第一条
 この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な
事項を定めるものとする。

裁判員制度国民の司法に対する理解や信頼の向上と言う目的の達成にどのくらい役立つのかはこれから問われることになるのですが、実は大多数の国民の生活には何等影響を及ぼさないであろう制度の変更であるにも関わらずマスコミの注目を集めています。とりあえず司法制度に対する国民の耳目を集めることには成功したと言って良いでしょう。

※ 実は、道路交通法の改正の方が実質的なインパクトは大きい気がする。たいした知恵者が居たものです。

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