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麦芽をアミラーゼ源に使うと、なぜ発酵期間がたかだか4日間にしかならないか説明しなさい”

”説明しなさい”っていう命令形で検索するのが何だか妙な感じ。まるで農芸化学系の試験問題のようだ。しかし、学生がWebで試験問題や宿題の答えを丸写しするようになるといけませんね。何より本人のためにならない。

・・・と言うわけで、この質問に対する回答は書いてあげない。ヒントはあげてもいいが、すすに答えが知りたいのであれば、以下は読むだけ無駄だ。

# ちなみに、Googleは命令形で検索するといつもよりもまじめに検索する。・・・ということは多分無い。

麦芽”(オオムギの種子を浸漬し、若干乾燥させて発芽させ、芽が出る直前のタイミングでさらに加熱乾燥させると同時に、揉んで根を切り、発芽プロセスを止めたもの)を”アミラーゼ源”(この言い回しが専門的。何らかの目的でアミラーゼが必要な場合に、アミラーゼを供給するために用いるもの、と言う意味だろうか)に使用して発酵させる、とくればビールを連想する。

細かいことを言えば、麦芽由来のアミラーゼでオオムギの胚乳のデンプンが糖化するプロセス自体は”発酵”ではない。コウジカビで麹を作るプロセスやクモノスカビでカンショのデンプンを糖化させるプロセスは、微生物による分解工程なので発酵と言えるが、オオムギの内生アミラーゼによるデンプンの分解には微生物は関与していない。そういう意味では、これが試験問題であれば、私なら「設問が間違っています。間違っている理由は・・・」と書いて潔く零点をもらう。

仮に、ビールの醸造工程の話であれば、酵母による発酵は1週間程度は続くので”たかだか4日間にしかならない”と言うことはない。そう考えると、糖化のことを発酵と間違えて言っていると考えるのが妥当だろう。

また仮に、麦芽由来のアミラーゼによる糖化が4日程度しか継続し得ないとすれば、次にその前提条件を明らかにしなくてはならない。つまり、「麦芽由来以外の他のアミラーゼでは4日以上糖化が継続する緩衝液、基質、温度等の諸条件が同一の場合」かどうかである。”たかだか”と言うからには、質問者は、同じ条件で糖化の期間がもっと長く持続できる酵素も知っているはずだ。

# 例えばBacillus cereus 由来のアミラーゼはかなり長持ちするはずだ。これは固定化酵素にも使われるので。

さらに言えば、オオムギの内生アミラーゼによる糖化作用の持続時間が4日なのか、麦芽由来(加熱処理後)のアミラーゼなのかでも異なる。簡単に質問してるけど前提条件が固まらないと適切な答えは引き出せないものだ。

なお、頭書の質問についてのヒントは、酵素の触媒反応が停止する、つまり失活することと関係している。”酵素の失活”と一般化することで問題は一気に分かりやすくなるはずだ。

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