妻と二人で入った、とあるイタリアン・レストランでの出来事。その店は、窓から"TX歯科"の看板が見えた。

昼時にベーコンとタマゴのピザと、カキとホウレンソウのスパゲティーを注文した。程なくシェフとおぼしき人がスパゲティーを持ってきたのだが、ピザがなかなか出てこない。隣の席では、デザートを食べ終わった頃にコーヒーが出てきていた。

ピザもスパゲティーも、美味かった。自家製の生地、自家製の麺で丁寧に作ってある。特に、スパゲティーのカキは絶品だった。惜しむらくはピザの生地の食感があまりモチモチしていなかったことだ。おそらく、強力粉の配合比率が低めで発酵時間も短めなのだろう。生地には砂糖の甘みはほとんど感じられなかったので、短時間で十分に発酵させるのは難しい条件だ。

厨房のピザ釜の前の床にカメリヤとバイオレット(日清製粉の強力粉と薄力粉)の袋が置いてあった。一日分の生地をあらかじめまとめて作るスタイルなら、お昼のピークタイムに小麦粉の袋が床に出しっぱなしと言うことはないだろう(もしそうなら、衛生管理が宜しくない)。となると、小規模なバッチで生地を仕込みつつ、発酵させつつ、順次ピザを作っていくのだろうか。お客の入りが予想以上に良いと、発酵が間に合わないことはあり得るが、もう少し生地を寝かせた方が良い。

また、スパゲティーとピザが出てくるタイミングの悪さからみて、オーダーの通し方にも問題があるようだ。一組の客がオーダーした場合、料理の仕上がり時間が揃うように給仕した方が喜ばれる。考えてみよう、二人連れで食べに来て一人だけ先に頂くというのは(二人の間柄によっては)、はばかられるだろう。大人数の場合は?全員分の料理が揃うまで待っていたら、最初に料理が来た人のパスタがのびてしまった、ということになるだろう。

スパゲティーを持ってきた男性は年配の方だったのでアルバイトではなくシェフ本人だったと思う。一方、ピザは女性の職人さんが焼いており、フロアの係の人が給仕していた。このことから、一組の客がオーダーがピザとパスタであれば、発注を受けた直後からピザ調理の職人とパスタ調理のシェフが、仕上がり時間を配慮せずに別々に動き出しており、相互の連携がとれていないまま調理している可能性が高い。ここの連携を良くすると、店の評価が高くなると思うのだが残念だ。改善に期待したい。

コーヒーを飲み終わって、さて帰ろうかと思ったのだがテーブルに伝票が来ていなかった。飲み物が食後の場合、給仕担当が飲み物と伝票を同時に持ってくる店が多い。こうしておけば伝票の置き忘れは発生しにくい。そのあたりの連携がとれていない点も改善の余地がある。

# 客の顔をみて何を食べたのか即座に計算して金額をはじき出すのは、香川県琴平町うどん屋宮武”くらいのものだ。・・・時々間違ってるけど。

仕方がないので、テーブルの番号を確認すると側面に"C-5"とあった(飲食店のテーブルは区画ごとにA,B,Cのブロック、時計回り(あるいはその逆)に1, 2, 3・・・の番号をふって管理していることが多い)。会計の際に、「どのテーブルですか?」と聞かれたので、即座に「Cの5番です」と教えた。担当者はカウンターの前の伝票置き場から伝票を取ってきたのだが、一つ、小さなミスを犯した。

伝票とテーブルの状態の両方を確認しない限り、実際に私が"C-5"の客かどうか、伝票を持参していない以上は確認できないのだ。

# 落語の”時そば”ではないが、良く確認せずにテーブルの番号を詐称すると10人分の代金を払う羽目になるかもしれない。

"C-5"の客は思った。料理が美味い店は多い。しかし、その中でもマネージメントに失敗して消えていく店もまた、少なからずある。この店には長く続いてほしいものだ、と。

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