年賀状というのは字数制限があって、あらかじめ書きたいことをまとめておかないと紙面に収まりきらないという見苦しい有様になってしまいます。その点、ブログだと、いかにだらだらと書き連ねようとも、長さに制限はなし切手代がかかるわけでなし、お気楽です。また、あれこれ外部情報にリンクできるのも重宝です。

というわけで、あらためて新春を言祝ぎ謹んでご挨拶申し上げます。

昨年原油高・穀物高で生産活動が苦しくなったかと思えば、サブプライム・ローン問題で信用収縮が起こって、一転して生産活動が滞り → 原油価格が下落し、穀物価格も安値安定、生産活動低迷のあおりで非正規労働者の雇用が一気に不安定になる・・・と言う具合に経済情勢がめまぐるしく変わった一年でした。

# 以下、経済学畑の方から見れば屁理屈かも知れません。

日本では職を失う方々が8万5千人を超える見通しと言われていますが、10億の国民を擁する中国では失職した農民工だけで2000万人とも3000万人とも言われています(「白髪三千丈」のお国柄なので鵜呑みにして良いのか迷いますが、四川大地震による失業者はこのうち140万人くらいだとか)。人口比では日本:中国=1:10ですので単純計算では失業率は235-350倍になります(労働人口の年齢による補正は行っていません)。

北京オリンピックの建設ラッシュもとうに一段落しているし、その際の雇用の期限は最初から見えていたので建設関係の離職者については整理が済んでいるはずですが、経済の停滞の影響は”世界の工場”に対してより濃い影を落としたと言うことでしょう。もちろん、我が国の8万5千人の失職は大問題なのですが、私は日本の経済規模に比してむしろ影響が小さかったのではないかと考えています。

その理由の一端は、日本の鉱工業生産にしめる”手仕事”の割合が近年、著しく減っていることにあるように思うのです。そのものずばりの統計があればよいのですが、当たらずとも遠からずというデータを示します。産業量ロボットの国別導入台数の比較データが外務省のサイトにあるので、グラフにすると次の通りです。
Robots_2

日本の保有台数は35万台あまり。二位のアメリカ(約15万台)、三位のドイツ(約13万2千台)、四位の韓国(約6万8千台)の合計よりも若干多いくらいです。これは、日本の製造業の現場では、もともと労働者が行ってきた作業をロボットが行う様になってきたことを示すデータと考えることもできるのではないでしょうか。その結果、単純労働者が非常に少なくなってきたのだと。

日本は高度経済成長期以来、農村部からの労働力を鉱工業に移転して、”三ちゃん農業”、ひいては”一ちゃん農業”を生み出し、農村部から労働力と、労働力の調整能力をすっかり奪ってしまいました。そのおかげで(いびつな形ですが)農業の機械化も進みました。今や、都市部で失業しても帰れる田舎など無くなってしまいました(そう言う意味では中国の農民工のように農村に帰るわけにも行かず、それよりもマシと言えないかも知れないのです)。

政治家も行政官も財界人も、しばしば産業構造改革と言う言葉を口にします。新聞もそれを悪し様には書き立てません。しかし、これまで産業構造の高度化の美名の下に行われてきた労働力の移転の結果がこれなのです。はたしてこれを、大失業時代の回避に成功したと受け止めるべきなのでしょうか。

これで良かったのか、日本はこれからもこの方向を推し進めていくのか。そして、私達はどう対応して暮らしていくのか。そんなことを常に頭の片隅でちらちらと考えながら今年も宜しくお願い申し上げます。

# ちなみに、今日は閏秒の調整でいつもよりも1秒余計に考える時間があります。

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