新型インフルエンザといえば、鳥が起源だとばかり思っていたら、意外な発生源から、しかも東南アジアではなく中米からやってきた。

このところメキシコを中心に豚インフルエンザのヒトへの感染が相当規模で起きている。とはいえ、季節性のインフルエンザの流行の規模と比べて高頻度かどうかまでは良く分からない。また、これまで豚インフルエンザのつもりで見ていなかったので、実はこれまでも見過ごされていた感染があったのかもしれない。

私は感染症の専門家ではないが、インフルエンザ・ウイルスの感染リスクは次の5点から考えている。

  1. ヒトからヒトへ感染しやすいか?
  2. 感染した場合の病状は深刻か?
  3. 感染が拡大しやすい季節か?
  4. 予防できるのか?
  5. 治療法はあるのか?

1.は今回の豚インフルエンザは、ヒト・ヒトの感染が確認されているので、もし、感染の規模がこれからさらに拡大するとWHOの警戒レベルはレベル4に引き上げられることになる。このウイルスが、どのくらい感染しやすいかは予断を許さない状況である。

2.はいわゆる毒性の問題。メキシコ保健相の公表では100人以上がインフルエンザに感染後に死亡しているという発表があったようだが、そのうち豚インフルエンザが検出されたのは、今のところ20人。他はこのウイルス感染が直接の死因であるかどうかは不明。また、メキシコ以外では通常のインフルエンザど同程度の病状であり、死者もでていない模様なので、抗生物質で対応できる二次感染が悪化した可能性も否定できない。ともあれ、感染者の病状に関する情報が出てこないと、ヒトに対して強毒性か否かは判断できない。しかし、かつて猛威を振るったスペイン風邪よりは致死率は低いようだ。若年の重症患者が多いのが気になるが。

3.は今回は専門家はあまり言っていない。が、インフルエンザは一般に大気の湿度が低い乾季には感染が拡大しやすいが、雨季には感染の拡大は起こりにくい。この時期、メキシコの気象はどうなのだろう?

こちらのページには東京とメキシコ・シティーの気候の比較がある。メキシコ・シティーの乾季は10−5月。乾季の終わりの5月の月間降水量でさえ、東京で最も雨の少ないの12−1月並で、しかも最高気温は25度以上の夏日。雨が少なく高温なので、おそらく、からからに乾燥していることだろう。

一方、日本は乾季は5月まで。4月以降は散発的にしか感染は見られなくなる豚インフルエンザも、通常のヒト・インフルエンザも新型インフルエンザ(鳥インフルエンザ由来)も、感染拡大に関わる季節要因が一緒であると仮定できるのであれば、今般メキシコや合衆国で感染の拡大しつつある豚インフルエンザが、この5月以降に雨季に入る日本など東アジアで感染爆発を引き起こす可能性はそう高くないだろう。

4. 予防法は、通常のインフルエンザの予防法と変わらない。うがい、手洗い、マスク着用。人ごみは極力避ける。

ワクチンは普通のA型インフルエンザ・ウイルスのH1N1型のワクチンが効くかどうかは不明。舛添厚労相は「(毎冬流行する)季節性インフルエンザに優先して行いたい」とのことだ。準備は結構なことだが、これまでの新型インフルエンザ・ウイルス・ワクチンでもWHOがワクチン株を公表してから製剤のプロトタイプ作成から臨床研究をへて、医療現場で処方できるようになるまでには2年以上はかかっている。今回は、流行中のウイルス株が既に単離されているようなので、若干早いかもしれないが、仮に6ヶ月で準備できても、ワクチンができるのは既に10月末。となると、今般の豚インフルエンザの流行が日本でも夏を越えるか、季節性のインフルエンザよりも高リスクであることが明らかになるまでは現状の季節性のインフルエンザ・ワクチン作成する方が優先事項ではないだろうか。

5. 治療法は、普通のインフルエンザと一緒。A型なのでタミフルリレンザが効くかもしれない。あとは二次感染を防ぐ抗生物質。解熱剤は他の障害を招く可能性があるので、市販のアスピリンは止めておいたほうが良い。それ以外は、休養と栄養をとって寝るのみ。

以上要するに、今のところは、強毒性かどうかの情報が出てくるまではなんともいえないが、死亡率から言えば強毒性ではなさそうな気がする。

なお、アメリカCDCのポッドキャストこちら。こういうときにすぐに専門家がインターネットで自分の言葉で伝えるというところが凄い。

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