作家、海堂尊氏(”たける”氏。”そんし”ではありません。念のため)を名誉毀損で訴えた方が現れた。
毎日新聞より。

名誉棄損:「バチスタ」海堂氏訴えられる 東大教授が提訴

 医療現場を描いた小説「チーム・バチスタの栄光」などで知られる作家、海堂尊たける)氏の書いたインターネットの文章で名誉を傷付けられたとして、日本病理学会副理事長の深山正久東大教授が、海堂氏と文章をホームページに掲載した出版2社に総額計1430万円の賠償と謝罪広告の掲載を求め東京地裁に提訴していたことが分かった。

 2社は「宝島社」(東京都千代田区)と「日経BP社」(港区)。提訴は昨年10月21日付。訴状によると、深山教授が厚生労働省から交付金を受けて行った研究について、海堂氏が「学会上層部と官僚の癒着」と記載した点などを名誉棄損としている。【小林直】

さて、たしかに宝島社のホームページには、海堂尊氏による”【海堂ニュース! 14】”というそれらしい記述がある。(名誉毀損に当たる文書を広める片棒を担いだ、と言われてはかなわないのでリンクはしない。)

しかし、当の深山教授は、このページが公開され続けることをどう思っているのだろう?もし、公表されるのが不都合であれば、裁判所に削除請求仮処分申請をして、出版社に対してホームページ上の文章の掲示をとりあえず止めさせる対抗措置を取ればよいのに・・・。そのあたりの感覚が良くわからない。

今回の提訴は損害賠償請求が主のようなので、民事だろうが、刑法で言う”名誉毀損”(罪)は面白い規定がある。

第二百三十条

 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
”事実の有無にかかわらず”なのだ。刑事訴訟にして事実を争うと、”やっぱり学会上層部と官僚の癒着”があったんじゃないか”と事実関係が明らかにされて、恥の上塗りになることを恐れての民事訴訟なのだろうか。だとしたら、やはり削除請求仮処分の方が先だろうに。

# それとも検察にはとりあってもらえなかった?

逆に裁判を通じて、書かれてしまったような事実がなかったことが明らかになっても、係争中はホームページ上に事実とは異なる「学会上層部と官僚の癒着」を臭わせる文章が掲載され続けて、深山教授の被る不利益は拡大し続ける。

既にニュースになってしまったので、海堂氏が書いた文章は、その事実の有無にかかわらず深山教授の意図とは裏腹に、これまで以上に多くの人々の注目を集めることになるだろう。これは、情報戦としては大きな失敗だ。

そして、今後、民主党厚労省にメスを入れる機会を与えることになるだろう。昨年10月の提訴ということなので、今回の政権交代は視野に入っていなかったのだろうが、年金問題だけでも大変なのにちょっと気の毒。

# 民主党が与党でむしろ良かった?

その結果、AIに世間の注目があつまれば、それはそれでよし。海堂尊氏のライフワークは思わぬ形で実ることになるのかもしれない。

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