アメリカで飼い主に対するアレルゲンを持たない猫を遺伝子組換えで開発する民間のプロジェクトがあるという。
 この話を、動物実験をする研究者に話したところ、「あ、マウスでそれができたらいいなぁ!」という話になった。実験用マウスを扱う研究者にはマウス・アレルギーが多いのだそうだ。
 とはいえ、マウスのアレルゲンってアレルギー症状のある人によって違うんじゃないだろうか?症状のある人数人の血清を使って、マウス蛋白に対してウエスタンをやってみるとわかるかもしれませんが、どうなんだろう。

 ウエスタンで蛋白が特定できたら、2-Dで展開し、末端のペプチドの配列を決めて、ゲノムの領域を特定し、あとは定法に従ってKOマウスを作成。ここで、Cre-Loxシステムをうまく使うと、作成されたKOマウスは遺伝子組換え生物にはならないケースが、実はある。
 特定遺伝子をKOする際に導入する抗生物質耐性遺伝子の両側にLoxPを配置。Creを持つTgマウスと交配し、抗生物質耐性遺伝子の抜けた個体を選抜しSibbing crossで固定する。
 この手順だと、2つあるLoxPの一方が最後までゲノムに組み込まれるが、実は、LoxPと相同な配列がマウス・ゲノムにはもともとある。
 LoxPの”ataacttcgtatagcatacattatacgaagttat”をクエリーにしてマウス・ゲノムに対してBlastすると、AC131065.Mus musculus chromosome 18, clone RP23-21J21, complete sequence. にヒットする(一塩基違ってはいるが)。このシーケンスの決定に供試されたマウスがTgでないとすると、マウス本来のゲノムに、この配列があることになる。
 だれか確かめてくれないだろうか。かりに一塩基違っていたとしても、マウス・ゲノム由来の配列がCreのターゲットとして機能するのであれば、マウス・ゲノム由来の変異型LoxPをCreのターゲットとして導入するのも良いかもしれない。
 こうして作成された、組換え”のような”マウスは、もともと自身のゲノム内にある塩基配列を追加されただけなので、セルフクローニングに当たるため、遺伝子組換え生物にはならない。従って、特定飼育区画などの特別な拡散防止措置も必要ないので、普通の実験用マウス同様、その辺で飼える。

 ナショナルバイオリソース・プロジェクトに参加されている理研の皆様、ひとつ検討されてはいかがでしょうか。きっとヒットしますよ!

2004/11/25 追記
AC131065.Mus musculus chromosome 18, clone RP23-21J21, complete sequence.というエントリーには、ベクターの配列が含まれていた。この配列のLox P相同部位は、Lox Pそのものでした。

残念っ!