ビッグニュースだ。
韓国・アメリカの連携チームがヒト体細胞の核を卵細胞に導入して胚発生させ、そこからES細胞を取り出すことに成功した。

 体細胞クローン技術をES細胞の作成に応用したもので、ES細胞作成のために受精卵を入手する困難が避けられ、しかも作成されたES細胞を移植治療に使用する際には移植を受ける患者本人の核を使えば、原理的には拒絶反応が起こらないはずなので安全性が高められる。

ミトコンドリアゲノムについてはさほど問題にされていないようだ。

 技術的な問題は次々クリアされていくが、卵細胞の安定供給は将来においても難しい問題である可能性が高い。いっそのこと献血ならぬ”献卵”という選択肢もありうるのかもしれない。最近、卵巣の表層細胞から卵細胞を誘導できたという話もあった。え?いつ減数分裂するの?核相はどうなっているの?と疑問は尽きないが、体細胞から卵細胞を誘導できるのであれば、卵細胞を提供できる年齢の幅が広がる可能性がある。もっとも、採取の際のドナーのリスクが骨髄の提供の際よりも小さくならなければ普及し得ないだろうが、最近は内視鏡手術の技術も向上して来ているので成分献血なみになればたいしたものだ。

 これらの技術と遺伝子治療を組み合わせることができればこれまで諦められていた疾病の治療への道が開かれる。たとえば、糖尿病の治療、生体肝移植の代替技術、神経幹細胞の移植治療、角膜移植の代替技術など。

 また、外科的な治療の選択肢も広がるだろう。骨や歯の形成と移植、自身の皮膚と同等な皮膚移植、ひょっとしたら脂肪幹細胞の移植による豊胸などの美容整形も。

 ただ、倫理的な問題は残されたままである。たとえ体細胞に由来する卵細胞から得られたクローン胚であっても、着床させれば個体発生する可能性のあるものについては、通常のクローン胚と同様に扱うのが妥当であろうから様々な価値観から自由ではいられない。
 また、各種の規制の下で研究(や、将来的には治療)が進められなくてはならないことは言うまでも無い。

 さて、表題ですが、特に深い意味はありません。体細胞クローン+ES技術は素人目にはコロンブスの卵。それを担う将来の研究者達(研究者の卵)に期待を寄せてます、というくらいのことです。

 ちなみに、研究者の卵はいつの日か研究者になるものですが、コロンブスの卵はいつまで待ってもコロンブスにはなりませんのであしからず。