某法律関係のQ&Aを書くことになっているのだが、やりつけない仕事なのでなかなか難しい。基本的には、FAQはメール・電話で頂いた質問・回答にランキングを付けて、分野ごとにまとめておしまいなのだが質問の整理・切り分けが難しい。

まずはインターネットで世の中のQ&A、FAQを眺めてみよう。

  1. 放射線Q&A(法医研):  質問は分野別に、例えば「放射線とは何か」のようにシンプルにまとめて、回答を体系的な文章にするスタイル。
  2. 外来生物法Q&A環境省): スタイルは1.と同じ。想定問答集的な色彩。
  3. 改正道交法Q&A警察庁): 基本的なスタイルは1.と一緒。しかし、このページの先頭には 「よくある御質問とそれに対する回答を一問一答形式で掲載しています」とあるものの、 一般から寄せられた質問とは思えないものが並んでいる。例えば、「今回の運転者対策の概要を教えてください。」とか 「運転中に手で保持して通話のために使用した場合に罰則が科される無線通話装置とはどのようなものですか。」とか。そもそも「運転者対策」って何?である。これは、Q&Aの前提に一般からの質問があったとしても、 結局は質問の範囲を役所が説明したいことに絞ってしまったもので、一般の人が知りたいこととは幾分乖離しているように思える。 質問自体に専門用語が入ることは避けなくてはならない。
  4. 労働基準法に関するQ&A厚生労働省): Q4.「36協定や労働協約において、時間外労働の上限を 「男性300時間、女性150時間」というように異なる定めをした場合、その労使協定は労働基準法は均等法に違反するのでしょうか。」・ ・・・一体誰からの質問を想定しているのか、あまり想像できません。ごめんなさい。企業の法務部でしょうか。 こうはならないように気をつけます。

 大体、Q&Aとなると、質問はシンプルに、回答は言いたいこと言わなければいけないことを並べるというスタイルです。では、FAQとなるとどうだろう?

  1. NPO法に関するFAQ内閣府): 見る人を、「一般の方」、「申請予定の方」、「既設NPO法人の方」に分類している。それは評価するが、中身は、 上記3.4.とあまり変わらない。
  2. FAQ/放射線障害防止法による安全規制文部科学省): 「放射性物質を体内に取り込んでしまった場合、被ばく線量を計算するにはどうしたらよいのですか?」・・・これは、 落ち着いて計算している場合ではない気もする。しかし、落ち着いて計算するほか無い事態であれば参考になる。 次、いきましょう。
  3. 化学物質排出把握管理促進法独立行政法人製品評価技術基盤機構): 検索方式。網羅的な質問と微に入り細に渡る回答。見事ではあるが作るのは大変。独力では無理。

 だいたい、行政機関にFAQなる用語を使えというのが無理かと言うくらい希少。どうなんでしょう。私なんぞ月平均30件の電話対応と30件のメール対応をこなしています。顧客満足度はほぼ95%くらいです。ですので、それをベースにしたQ&Aを作ればよりよいものが出来そうなものですが、これが結構難しい。まず、役所として説明しておかなくてはならない物事の比重と、頂く質問の比率がかみ合わない。また、質問それ自体のうちに、法律に対する誤解が内包されている場合が多い。

 生の質問には、たとえば、「P1-P3の拡散防止措置が決められていますが、大臣確認の場合はこれより厳しいものと理解して宜しいでしょうか?」とか、「市販のアデノウイルスベクターの拡散防止措置はP1で良いと聞いたのですが?」と、どこにそんなことが書かれているの!?と突っ込みたくなる質問が満載です。これを、ほぼそのままの形で役所のホームページに載せるべきか否か・・・悩ましいものがあります。しかし、あまりに整いすぎた質問を載せるよりは、今この時点での一般の方の理解はこのくらい、という水準の質問の方が現実をよく説明するのではないかと思います。

 この2年間ぐらいに頂いた質問を見返していて気づいたのですが、Q&Aははっきり言って生ものです。回答のスタンスがぶれてはいけませんが、質問自体には旬があります。 Q&Aは質問と回答の絶妙のバランスで成り立つものですから、時折見直す必要があります。ということで、生に近い錯誤を含んだ質問と、ぶれないQ&AでFAQリストを完成させようと思います。