ncRNAの発見で生物学のゴールは一気に遠のいたか?

 という不安がある一方で「おおっ、これで一生喰いっぱぐれないぞ!」という研究者の快哉が聞こえないでもない今日この頃。
RNA大陸の発見は、研究者には未踏の領域を提供し、ファンドを出すスポンサーには期待と徒労感の両方をもたらしたかに思える。

 ヒトゲノムの解読が一旦完成したころ、次のような議論を耳にしたことがある。「最近の学生は気の毒だね、俺たちが学生だったころは、表現型から特定された遺伝子の構造がどんどん決まっていた時代だった。もうヒトゲノムの構造も決まっちゃったし、生物学には残されたフロンティアなんて無いんじゃないのか?」と。この方は、ファンクショナル・ゲノミックスなんて知らんのだろうなぁ・・・
と思いつつも、ゲノムの構造が決まると生物の機能の解明は”ありもの”の構成要素の関係性を明らかにする一種のパズル解きに堕してしまうことは変えがたい。もう、生物学のパラダイムは「新規の遺伝子の発見」ではなく、すでに見つかっている「遺伝子の機能の発見」へと大きく転換しているのだ。

 と、そこへ持ってきて、ncRNAの発見である。ゲノムの塩基配列は分かっても、ncRNAの転写単位の法則性はまだ分からない。
機能も分からない。転写の組織特異性も今のところは分からない。
三次元構造のアラインメントや相同性検索の効率の良いアルゴリズムもない(NP困難なのだそうだ)。さて、どう切り口を見つけるか?
これからが面白い。

 生物のゲノムは、ソースコードにして、それ自身が機能するハードウエアでもあるのだ。スパゲッティ上等!である。しかし、数本の麺を引っ張ると全部が持ち上がるようなスパゲッティって・・・茹ですぎと違います?