昨日、田植えの打上の際に4,000円でどれだけの大豆が買えるか、という話になった。

 農水省の資料によると、平成17年11月から平成18年3月にかけて市場で落札された60kgあたりの平均価格は、産地・銘柄にもよるが、6,090円(山形県産、中粒、品種:タチユタカ)〜11,235円(北海道産、大粒、品種:ツルムスメ)の範囲にあり、約2倍の価格差がある。このデータを元に考えると、4,000円で21.36kgから39.4kg買えることになる。もっとも、消費者が手にする際にはもっと高くなっている。

 国産大豆の販売によって農家が得られる収入は、大豆の販売代金+政府の交付金(政府の承認を受けた団体、組合の場合。収穫物ベース。)+自治体の助成金(県など。作付けベース。)となっており、生産者の手取り額の60-70%は国の助成金となっている。

 であるとすれば、生産物の大豆を通常の販売ルートに乗せる場合、農家の手取りは落札価格の2-3倍程度にはなる(もっとも交付金の考え方が不足払いであるならば、実際問題として3倍まで拡大することはあまり無いと考えられるが)。つまり、 60kgあたり、12,000円から30,000円くらいになる。これを、単位面積あたりの収量で考えてみる。平成17年度の統計によれば、作付面積は134,000ha、収穫は226,400tなので、10aあたりの収量は169kg(=33,800円〜845,00円)になる。

 さて、生協を中心とした”大豆畑トラスト”という国産大豆の生産奨励運動がある。この運動では、運動の賛同者から大豆畑10坪(33 m2=0.33 a=0.033 10a)につき4,000円の”基金”を募っており、その代わりに10坪相当の収穫物を還元する仕組みになっている。

 単位面積あたりの収量ベースで考えると、10坪は0.33aなので慣行農法による平均収量は5.6kg(=0.033 x 196)程度。これを4,000円で購入すると、消費者側は市場価格の約3.8倍から7倍の金額を払っていることになる。逆に、生産者側から見ると、市場価格の3.8倍で売れれば慣行農法並みの収穫があがれば、通常の流通ルートで助成金を貰いながら販売する場合よりも良い収入になる。が、これはあくまで慣行農法と同程度の収穫があった場合の話である。

 とある大豆畑トラストのblogによれば、基金4,000円には郵送・通信費を含むとあり、受け取りは大豆5kgとある。このくらいの収穫があれば慣行農法の1割減程度なので相応の採算性はあることになる。一方、受け取りが大豆2.7kgというグループもあり、こちらの採算性は到って厳しい水準にある。

 さて、有機農法の収量が慣行栽培に匹敵するか、という議論もあるかもしれないが、現状では慣行栽培は比較的、定式化されていると考えられているが、有機農法については千差万別であり、十把一からげにはできない。そう、良い有機農法もあれば、悪い有機農法というものさえあるかもしれないのだから。

 ともあれ、現状の大豆畑トラストについては、採算ベースにのるもののあればそうでないものもあり、凶作時の保障制度の対象になっていない場合には、農家の経営に対してリスクを負わせることは考慮しなくてはならない。

※ ところで、一口4,000円の基金は、大豆の代金では無いのでしょうね?もし大豆のお代である場合には、事実上は消費税逃れの脱法行為とみなされるリスクもあります。コンプライアンスには注意を払いましょう。