GreenPeaceが遺伝子組換え農作物を槍玉に上げて、「トゥルーフード」というキャンペーン活動を行っている。

彼らの言う 「トゥルーフード」の基準は、

  • 遺伝子組み換え原料を使っていない食品です
  • 環境とわたしたちの健康をまもることにつながる食品です
  • 持続可能な農業を応援する食品です

だという。これは一種の食品表示の基準である。議論を進めるために、便宜的にこの基準に

  1. 遺伝子組み換え原料を使っていない食品
  2. 環境とわたしたちの健康をまもることにつながる食品
  3. 持続可能な農業を応援する食品

と番号を振らせていただく。

これらの表示基準のうち科学的に検証可能なものは、恐らく1.だけであろう。なぜならば、1.の判断基準は「使っている・いない」であって、客観的な基準であるが、2.3.については「・・・につながる食品」あるいは「・・・応援する食品」とされており、食品そのものが何かに「つながる」こと、あるいは「応援する」ことか、定義されていないし、測定することもできないため、(GreenPeaceの)恣意的判断にゆだねざるを得ないからである。

「トゥルーフード」を推奨する一方で、GreenPeaceは政府による食品表示の大半を、分かりにくい、あるいは、あいまいである、という理由で攻撃している。例外は有機JASマークで、このマークのある食品は「グリーン」になるという。

では、これらの基準による「トゥルーフード」の判定をGreenPeaceはどのような手順で実施したのだろうか?

彼らの調査方法は、このページに記載されている。
要するに、食品会社にアンケートを送り、「遺伝子組み換え作物由来の原料使用についての方針及び現状を調査しました。」とある。

しかし、アンケートの内容が公開されていないことから、この記述で表示基準の2.3.についてGreenPeaceが、どのように調査したのかはわからない。それとも、「遺伝子組み換え原料を使っていない食品」であれば、必ず2.3.の基準を満たすと考えているのだろうか?少なくとも、公開された情報からは、2.3.の基準については何が「トゥルーフード」に該当し、何がそうでないのかを一般人が判断できる基準は示されておらず、もし「トゥルーフード」を選ぼうと思うならば、GreenPeaceの判断に頼らざるを得ない。


つまるところ、GreenPeaceの言う「トゥルーフード」とは、GreenPeaceのアンケート調査と聞き取りから「食品会社が遺伝子組換え作物を使っていないと見做している」食品、そして政府の有機JASの認証によって、遺伝子組換え作物を使っていない、とされている食品に対して貼られた、もう一枚のレッテルと言うことができるだろう。 それは、法律に基づく表示よりも信頼するに足りるものなのだろうか?

一般の消費者が、「環境とわたしたちの健康をまもることにつながる食品」や「持続可能な農業を応援する食品」を選びたいと考えて商品を選択したいのならば、GreenPeaceの推奨する「トゥルーフード」の表示に頼っていてはいけない。
その表示基準は、5%以下の割合で遺伝子組換え作物が含まれているJAS法の認める「遺伝子組換えでない」と言う表示を若干厳しくした程度のものであって、「環境とわたしたちの健康をまもること」や「持続可能な農業を」推進する目的を達成するには、あまり当てにならないものだからだ。
green?red?

なお、The True Food NetworkThe True Food Shopping Guideでは、単に遺伝子組換え作物を原料としているか否かのみを基準にして、"NON-GENETICALLY ENGINEERED INGREDIENTS"と"GENETICALLY ENGINEERED INGREDIENTS"に分けている。日本版の『トゥルーフード・ガイド』の"グリーン"と"レッド"も判断の基準は、「遺伝子組み換え原料を使用していないと保証する書面を提出した会社、またはそのブランド。オーガニック製品もすべてグリーンと見なします。 」(グリーン)と「遺伝子組み換え「不分別」の原料を使用している会社とブランド。
 遺伝子組み換え原料使用に対する会社方針等の書面による情報提供の無かった会社には x 印をつけています。
」なので、ほぼ同様。

ではあるが、日本版の「トゥルーフード」の特徴である「環境とわたしたちの健康をまもることにつながる食品」や「持続可能な農業を応援する食品」は、一体どこへ行ってしまったのだろうか。また、書面による情報提供が無い会社は無条件にxであって、GreenPeaceを相手にしない企業はそれだけで断罪されるのである。この姿勢は頂けない。




私は、ややこしいことを考えずに、食品を買う際は原産地表示が日本国内の物を選ぶことにしている。値段は若干高いが、それで日本の農業者と水産業者を支援できる。

加工食品の場合は、食品会社任せにならざるを得ない。品目別の食料自給率を考えると、食用油や大豆加工製品は、ほぼ間違いなく輸入原料で作られているし、その多くは遺伝子組換え作物であると考えられる。しかし、それが遺伝子組換え作物であろうが無かろうが大きな問題であるとは思わない。なぜならば、私は、科学的に具体的な危険性があることを示すことができないものは、何であれ危険であると決め付けることをしないからだ。