フランスとイタリアの研究チームがブドウ(Vitis vinifera cv. pinot noir)
のゲノムを解読した

顕花植物では4番目、木本では2番目、果樹では最初のドラフトシーケンスだ。論文自体は、というかどの分野でもだいたいそうなんだが、面白いと思える人以外には面白くない。・・・当たり前か。

私から見て面白いと思えるところを列挙すると、

  1. 古い時代の倍数化に関連すると見られる双子葉植物に共通のゲノムの重複の痕跡を見つけたこと。
  2. 香気成分に関連する遺伝子が多数見つかったこと。
  3. 論文の内容そのものではないのだが、ワイン生産国であるフランスとイタリアのチームが研究していること!

一方、論文のなかにこんな表現がある。

"A striking feature of the grapevine proteome lies in the existence of large families related to wine characteristics, which have a higher gene copy number than in the other sequenced plants. Stilbene synthases (STSs) drive the synthesis of resveratrol, the grapevine phytoalexin that has been associated with the health benefits associated with moderate consumption of red wine."

「ワインの特徴に関連した大きな(遺伝子の)ファミリーがあり、遺伝子の解読された他の植物に比べて、遺伝子のコピー数が多いのが衝撃的」って・・・そりゃ、ワインをワインたらしめているのは原料がブドウだっていう当たり前のことで、そのブドウの遺伝子がワインの品質に関係しているというのも当たり前のことでは・・・と思うのですが。でなきゃ、原料の品種の違いにこだわるのは無意味ですから。

それから、resveratrol合成遺伝子の関連で「赤ワインの適度な消費に関連した健康上の利点」と言ってますが、なにも"French paradox"を持ち出さなくっても良いのでは。

さて、ワイン生産国であるフランスとイタリアのチームが研究していることについて言えば、農作物のゲノム解読の国際的な情勢はと言うと、実はこんな具合。

  • お米を主食にしている日本でイネ・ゲノムを解読
  • ワインをよく飲むフランスとイタリアでブドウのゲノムを解読
  • キムチをよく食べる韓国でトウガラシと白菜のゲノムを解読中 (どちらもまだ浅漬け状態)
  • ビールをよく飲むドイツとアメリカと日本でオオムギのゲノムを解読中(ただいま発酵中)
  • オレンジジュース生産国のブラジル、スペイン他でオレンジ(カンキツ)ゲノムを解読中(ただいま生搾り
  • ジャガイモをよく食べるドイツでバレイショ・ゲノムの解読中(コメントが思いつかない。ごめんなさい)

つまり、各国の重要な食料資源と密接に関連した研究ターゲットになっているのです。
予算の説明がしやすいからでしょうか・・・この他、コムギとかトマトとか、技術的に難しいものや予算の説明が難しいものも中にはありますが。

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