続−遺伝子組換えトウモロコシ MON 863のラット90日給餌試験に関する統計分析の再評価

明日、8/30、MON 863のラット90日給餌試験に関する食品安全委員会の見解が纏められる予定。

これまでの議論の経緯を復習すると、

  1. ヨーロッパ食品安全委員会(EFSA)が、モンサントの遺伝子組換えトウモロコシ MON 863の安全性評価を行い、
    問題なしと評価した。(2006.01)
  2. セラリーニ教授らフランスの研究チームが、裁判資料で入手したMON 863のラット90日給餌試験のデータを再解析し、
    肝臓と腎臓に対する毒性が疑われると論文発表。(2007.03)
  3. EFSAは、この論文の妥当性をGMOパネルに諮問。(2007.03)
  4. EFSAのGMOパネルは統計の専門家に委託して、その論文の解析手法を検証。
    GMOパネルとしてはセラリーニ教授らの論文の統計手法に問題があると声明。(2007.06.28)
  5. EFSAが、セラリーニ教授らの論文の統計手法には妥当性に問題があるという見解を公表。
    (2007.06.28)
  6. オランダVWAはMON863トウモロコシが安全であると確認。(2007.07.09)・・・
    このあたりでEU各国政府より、MON863トウモロコシが安全であると支持する声明が続く。
  7. 食品安全委員会 第50回 遺伝子組換え食品専門調査会で、EFSAの見解を照会。今後の検討課題とする。
    (2007.07.10)
  8. ニュージーランドNZFSAはMON863トウモロコシが安全であると確認。(2007.08.17)
  9. 食品安全委員会 第51回 遺伝子組換え食品専門調査会で、
    統計の専門家として東京理科大学大学院工学研究科教授 吉村功 先生を専門参考人として招聘(会議の参考資料2 ”MON863の90日混餌投与試験のデータ解析についての統計家としてのコメント”・・・ただし文書は非公開)。(2007.08.03)

ここでに至って、明日、遺伝子組換え食品専門調査会の纏めた見解を食品安全委員会で議論して、リスク評価機関としての見解を公表することになった。

8/30時点では、第51回 遺伝子組換え食品専門調査会の議事録がまだホームページで公表されていないので、どのような議論があったかは定かではないが、おそらく吉村先生のコメントに沿ってセラリーニ教授らの論文の問題点を検証する作業になったのではないかと想像する。

おそらく、再評価の結果、特に問題ないという評価結果になることだろう。

ちょっと寂しいのは、日本は生物統計、特に医学薬学分野の統計の専門家が少ないため、こういう局面で専門家集団を組織するところまでは、なかなか行けないことだ。
大学でも薬学分野の臨床研究に対応した統計専門コースが設置され始めたのが1999年で、まだ10年経っていない。ちなみに、バイオインフォマティックス分野では、早くも人あまりが言われているので、専門的な人材養成の分野の絞り込みは難しい問題だということがわかる。

さて、意図せざるGM作物の混入率についてEU並を要求しているグリーンピースの諸君は、安全性評価結果についてもEUの見解と一致した食品安全委員会の見解を支持するのだろうか?

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071209 一部MON869という表記をMON863に修正。