トランス脂肪酸と遺伝子組換え大豆

昨日夜9時のNHKニュースで、非組み換えダイズの国際価格上昇の原因として、

というのが挙げられていた。

アメリカの消費者が、合理的な判断に従って、
NON-GMという根拠のない安心感よりもトランス脂肪酸を含まない安全性を積極的に選択したのか、はたまた、「トランス脂肪酸にNO!」
という消費者の選択に対応して、
食用油メーカー主導でトランス脂肪酸を含まないタイプの遺伝子組換えダイズへの転換が進み消費者は何も考えていないのか、
そのあたりの原動力が何なのかは番組からはわからなかった。

一方で、日本でも今年あたりからモンサントトランス脂肪酸を含まない遺伝子組換えダイズ(低リノレン酸の大豆(ビスティブ
)のプロモーションを行っている。育種戦略としては、

  • トランス脂肪酸低減は従来育種+遺伝子組換えによる除草剤耐性(第1世代)
  • 遺伝子組換えによるトランス脂肪酸低減Ver.1+遺伝子組換えによる除草剤耐性(第2世代)
  • 遺伝子組換えによるトランス脂肪酸低減Ver.2+遺伝子組換えによる除草剤耐性(第3世代)
  • 遺伝子組換えによるトランス脂肪酸低減Ver.2+オメガ脂肪酸+遺伝子組換えによる除草剤耐性(第4世代)

という、具合に、とりあえず市場のニーズには応える。でも、さらに徹底的に品質を改善して他社のダイズとの差別化を図る、
という段階的な改善を計画していたと思う。

平均的な日本人の食生活で、心疾患のリスクが高まるほどトランス脂肪酸を摂取することはないと言われており(1日摂取量が、
アメリカでは5.8g/day、日本では1.56g/day)、食品安全委員会厚労省も特に対応が必要とは考えていない。一部に、
この対応を不十分だと指摘する声もあるが、私はそうは思わない。

なぜならば、食品安全委員会のとりまとめたこの資料のp.6によると、
平均的なマーガリン100g中のトランス脂肪酸の量が7gなので、
アメリカ人のトランス脂肪酸の日摂取量はマーガリンで言えば80g相当にあたる。市販のパック入りマーガリンは140-150g程度なので、
アメリカ人並みのトランス脂肪酸を全量をマーガリンで摂取しようとすると2日で1パック食べる計算になる
こんな極端な食生活を送っている人は、私の周辺には、まずいないと思う。

・・・というか、アメリカ人の食生活って一体どうなってるんだろう?パンにマーガリンを塗るんじゃなくて、
すしネタ状のマーガリンにパンを乗せて食べてるのでは無かろうか。また、それだけ大量に脂肪をとり続けていると、
仮にトランス脂肪酸がゼロでも確実に太る。正直な感想を言えば、アメリカ人が気にするべきは、トランス脂肪酸の割合ではなく、
脂肪の総摂取量だと思う。心疾患のリスク”だけ”下げても問題はほとんど何も解決しない。

ちなみに、マーガリンは植物油脂の不飽和脂肪酸をを水素化して作る。
その際に、トランス脂肪酸が生成されるので、マーガリンはトランス脂肪酸がかなり多い食品であると考えられる。実際、
食品安全委員会の資料でもそうなっている。

マーガリン工業会でもトランス脂肪酸に関するコメントを公表しているが、
要は食べ過ぎなければ問題ない、という至極当然の指摘をしている。

・・・ ということで、皆さんも健康のために毎日マーガリンを半パックも食べるような食生活は送らないように気をつけましょう。

なお、上の方に書いたモンサントの第4世代ビスティブに含まれるオメガ脂肪酸というのは、DHAEPAのこと。
青魚の魚油に多く含まれているので、イワシ、サバ、サンマなどをよく食べている日本人は、
わざわざダイズから取らなくても別に不自由はしないと考えられる。

でも、「オメガ脂肪酸リッチなお豆腐!普通のお豆腐に比べてDHAは256倍含まれています!
と書いた豆腐が、「遺伝子組換えダイズは使用しておりません」とい豆腐と並べて売られていたら、
オメガ脂肪酸リッチの方を買うかもしれない。その頃にはアメリカでの遺伝子組換えダイズの作付けが間違いなく90%以上だろうから、
品質に違いがなければそっちの方が安いだろうし。

 

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