FDA,クローン家畜および後代のリスク評価、リスク管理計画および製造業へのガイドラインに関する文書を公表

1/7のエントリーの続報。FDAがクローン家畜とその後代についてのRisk assesment, Risk
management plan,  Guidance for industryの3つの文書を公表した。

FDAの公表した文書の本編は以下のURL。(まだよく読んでいない。)

 http://www.fda.gov/cvm/cloning.htm

January 15, 2008, FDA Newsより http://www.fda.gov/bbs/topics/NEWS/2008/NEW01776.html


After years of detailed study and analysis, the Food and
Drug Administration has concluded that meat and milk from
clones of cattle, swine, and goats, and the offspring of clones
from any species traditionally consumed as food, are as safe to
eat as food from conventionally bred animals. There was
insufficient information for the agency to reach a conclusion
on the safety of food from clones of other animal species, such
as sheep.

”ウシ、ブタ、ヤギにの肉と乳については、その後代も含めて従来の方法で繁殖させた家畜と同等の食品安全性であると結論。ただし、
最初に体細胞クローンが作成された羊については、情報の不足を理由に結論を保留。”

クローン家畜後代のリスク評価の結果については、
通常の生殖過程を経ることでエピジェネティックな効果は解消されると考えられており、マウスモデルでも確認された。また、
ウシとブタのクローン家畜後代の詳細な観察でも発生や生育に異常が認められなかった。
また,ブタについては肉質についてもクロン家畜後代とそうでないものの間に本質的な違いは見られなかった、
等々の実証的なデータで違いはないことを確認。生物学的な仮定と、それらの実験的な事実を踏まえてクローン家畜後代の食品利用に関しては、
クローンでない通常の繁殖で生産された家畜の場合と同等のリスクであると結論している。

一方、安全性についての結論を受けて、表示の取扱についても以下のように言及している。


The agency is not requiring labeling or any other additional
measures for food from cattle, swine, and goat clones, or their
offspring because food derived from these sources is no
different from food derived from conventionally bred animals.
Should a producer express a desire for voluntary labeling
(e.g., "this product is clone-free"), it will be considered on
a case-by-case basis to ensure compliance with statutory
requirements that labeling be truthful and not misleading.

”従来の家畜と同じなので、表示や対策は要求しない。たとえば、”この製品は、クローン・フリーです”
と言う事業者による任意表示は、
公正で誤解させない表示を要請する法定基準へのコンプライアンスを担保するようケースバイケースで考慮されることになるだろう。”

・・・とあるが、遺伝子組換え作物のケースから類推すると、科学的には安全性において同等であっても市民の”
いわゆる安心”のために表示を求める運動がある− 私はこのような運動を、不公正な、”科学技術に対するいわれのない差別”
であると考えているが− ことから、クローン動物製品に対する表示を求める圧力団体の活動が活発化するのではないかと憂慮している。
それはもはや、”リスク管理”の問題ではないのだが。

もっとも、遺伝子組換え作物の場合は開発元が「多国籍企業」、「公害産業」、「農薬製造業者」
等のレッテルを貼られているのに対して、クローン家畜の場合は開発元がベンチャー企業である場合が多く、
農家からの受託でクローン家畜を生産すると言う構図になるだろう。この場合、
圧力団体が開発元に対する反対運動をすると市民の目からは中小事業者いじめに映るであろうから、彼らの矛先が政府に向かう公算は高い。

なお、http://www.fda.gov/cvm/CloningRA_RiskMngt.htmにあるRisc
management planと言う文書の”RISK MANAGEMENT PLAN”の項目において、
クローン家畜後代の食品としてのリスク管理については次のように述べている。
この部分が食肉輸入国としての日本の立場に最も関連するのではないだろうか。


Risks from Food Derived from Clone Progeny

No food consumption risks were identified for clone progeny.
Therefore, in our Guidance for Industry, we state that food
products from the sexually-reproduced offspring of clones
are suitable to enter the food and feed supply under the same
controls as applied to any animal that is the product of sexual
reproduction
. We anticipate that most of the food products
from this technology will be derived from clone progeny.

要は、クローン家畜後代について食品として消費した際のリスクは見られない。従って、
リスク管理においても通常の方法で繁殖させた家畜と同等のコントロールでよい、としている。

・・・となると、いずれはクローン家畜の後代(何代目かは分からないが)
が市場で流通する可能性は結構高いと考えて良いだろう。アメリカでクローンウシやブタがポピュラーに生産されるようになると、
それを種畜とした後代の畜肉が日本にも輸入されることになる。その前に、日本の食品安全委員会もリスク評価を求められる可能性が高い。

しかし、考えてみると遺伝子組換えと違ってDNAで識別する方法も殆どない(親子識別ができれば、
クローン家畜の親との親子関係くらいは推定できるだろうが、
クローン家畜の元になった親動物の凍結精子を使って繁殖したのだと言われると反論もそこまで)ので、
個体識別されずに輸入された畜肉についてはリスク管理のしようがない。もともと、遺伝子組換え技術とは違って、
クローン技術は自然の動物と寸分違わないことを目指しているのだから、無理矢理違いを見つける方が大変。

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