「役に立たない」方が幸せな研究

世の中には「役に立たない」方が幸せな研究というものがある。

バイオテロ対策、飢餓対策、放射線防護、地震対策など、ハザードに備えるための基盤研究は、その成果が世の中の役に立つ時には、
世の中が不穏な時代になっていると考えられる。

ちょっと旧聞ですが、3/17の新聞発表より。


東芝
警察庁や帯畜大と共同でDNAチップを用いた生物剤検知システムを開発

DNAチップを用いた生物剤検知システムの開発について


−高精度な生物剤検知用DNAチップの開発を完了−




 警察庁 科学警察研究所(以下、科警研)は、国立大学法人 帯広畜産大学 大動物特殊疾病研究センター(以下、帯畜大)、
株式会社 東芝(以下、東芝)と共同で、生物剤検知用DNAチップ(*1)を開発しました。




 今回開発したDNAチップは、科警研、帯畜大の持つ生物剤(=病原体)検出に関する技術と、東芝の電流検出型DNAチップ技術(*2)
を融合することで、生物剤の混在が疑われる試料に対し、生物剤の迅速かつ簡便な多項目同時検知を可能にします。




 近年、NBCテロ(*3)が国民の安全・安心に対する大きな脅威となっていますが、そのような事案が発生した際には、
迅速な検知と情報伝達が被害の最小化や蔓延防止、および犯罪捜査に最も重要となります。特に、生物剤を用いたバイオテロの場合、
使用された生物剤の種類によって、その後の対応が大きく異なることから、
複数の生物剤を迅速に同時検出するシステムの構築が求められますが、
これまでの検査方法は操作が煩雑で多項目の同時検知が難しいなどの課題がありました。そこで、科警研、帯畜大、東芝は、
現場レベルで迅速かつ簡便に複数の生物剤を同時検知可能なシステムの構築を目指し、
DNAチップをベースにした生物剤検知システムの開発を進めており、まずは今回、
そのキー技術となる生物剤検知用のDNAチップの開発に成功しました。




 今後、三者は、更なる検出の迅速化、簡便化を進め、当生物剤検知用DNAチップを搭載した「全自動モバイル型生物剤検知システム」
の実現を目指して、共同開発を継続していきます。




 なお、今般の開発は、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(JST・CREST)の「先進的統合センシング技術研究領域
(平成17年度採択)」の一環として実施したもので、
3月24日より国立京都国際会館で開催される第81回日本細菌学会総会において発表を予定しています。






*1:DNAチップとは、ガラスやシリコン基板上に、複数種のDNA分子を固定したもので、
試料中のDNAと結合するか否かを調べることで、試料中に目的のDNAが存在するかを調べることができる。




*2:電流検出方式とは、電気化学的に活性な核酸挿入剤を用いる東芝オリジナルのDNA検出技術。




*3:Nuclear/Biological/Chemical terrorism 核物質、
生物剤又は化学剤若しくはこれらを使用する兵器を用いた大量殺傷型のテロ。

研究代表者が大学時代の同級生だったのでビックリ。僭越ながらGood Jobと申し上げます。

炭疽菌や野兎病菌のような人獣共通感染症の病原菌の研究は、獣医畑でないとなかなか専門的にはやれないので、
北大や帯広畜産大はこの分野の研究者を養成する上で非常に重要な教育研究機関になっている。・・・というか、
日本は公衆衛生の向上によって感染症が減ったために、多くの大学で医学部での感染症研究が昔から見ると下火になってきているのも一因だ
(これ自体、「役に立たない」方が幸せな研究ではあるのだが)。

こういう社会基盤の安定のための研究にはなかなかお金がつかないものなので、JSTの資金提供にもGood
Job!と言ってあげたい。

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