明治製菓GF2の自主回収に関して

ひさしぶりに緑平和のホームページを見てみたら、
消費者団体と一緒になって明治製菓に嫌がらせをしている事が判明。

明治製菓は優れた技術力をお持ちです。GF2は、
血糖値が急変すると困る方には画期的な製品です。これからも良い製品をとどけて下さい。

緑平和は商取引の相手を明かせと事業者に圧力をかけている。明治製菓の皆様にはこのような圧力に屈せず頑張っていただきたい。
本気で圧力をかける気なら弁護士を立てる所でしょうが、その気はないようなので、例によってマスコミ向けのパフォーマンスでしょう。しかし、
今回は取り上げている新聞社も無い様なのですっかり飽きられてしまったようです。



事実関係は、明治製菓が自主開発した”GF2”という甘味料(果糖からなる3糖)を使用した製品について、製造工程で使用した酵素
(黒麹菌由来インベルターゼ)が食品衛生法上必要な申請をしていなかったことから、製造した製品について自主回収を行ったと言うことだ。

プレスリリースにはあまり詳しいことが書かれていないので、
かえってワケの分からない空想を膨らます人もいるようだ。

プレスリリースのポイントは

  1. 黒麹菌由来の酵素自体の使用にあたっては、食品衛生法に則った申請が必要。
  2. 自主回収である(回収命令など行政指導はされていない)。
  3. 製品の流通自体が食品衛生法違反に当たるかどうかは誰も判断していない。
  4. 製品そのものには、食品衛生法の審査を必要とする酵素は含まれていない。
  5. 従って、製品による健康被害は想定されない。

である。

食品加工における酵素の使用にあたって、食品衛生法の規定する申請が必要なケースといえば、
酵素が遺伝子組換え技術によって改変されたものである可能性が高い。食品安全委員会で審査した実績はこちら
酵素など食品添加物の場合の審査基準はこちら
この評価基準自体によると、明治製菓のプレスリリースでは触れられていないが、
もしイベルターゼが遺伝子組換えによる食品添加物となると、甘味料としてのGF2そのものが
「遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物」に該当する様な気もする
)。

なお、遺伝子組換え技術を使用した酵素であっても、安全性評価基準で安全性を推し量るべきではない場合もある。それは、
遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物の安全性評価基準」の第1章第3でいう


「原則として、「組換えDNA技術によって最終的に宿主に導入されたDNAが、
当該微生物と分類学上の同一の種に属する微生物のDNAのみである場合」、又は
「組換え体と同等の遺伝子構成を持つ生細胞が自然界に存在する場合」に該当する微生物を利用して製造されたものは含めないものとする。」

という規程だ。これによれば、事業者が安全性評価を厚生労働省に申請し、
厚生労働省食品安全委員会に審査を求めても、結果としては「評価対象ではない」と判断され、リスク評価不要、つまり
食品安全委員会としては評価基準に則った評価はしない」ということになる。実例はこちら



(以下想像) 今回のインベルターゼの一件も、
遺伝子組換え技術で点突然変異変異を導入した黒麹菌のインベルターゼを、
元の黒麹菌に相同組換えでスポンと入れたものだと想像する(想像終わり)。であれば、評価を申請しても、
結果としては「評価対象ではない」と言われる可能性が限りなく高い。だが、その判断をするのは事業者ではない。

今回の明治製菓のプレスリリースにも、そのあたりの事情がにじみ出ている様に思う。こう書いてある。


「GF2を製造するにあたって使用する酵素の申請が、
食品衛生法で義務づけられていたにも関わらず、その手続きをしていなかったため。」

類似のケースで、いわゆる遺伝子組換え作物の場合には、食品安全委員会での評価結果で問題なければ、
それをうけて、所管官庁が流通を解禁するので、その手続きを経ていないものが流通した場合は直ちに食品衛生法違反となり、
安全性の評価されていない未承認の遺伝子組換え作物として扱われる。

しかし、今回のケースでは申請しても「評価しない」と言われる公算が高い。だが、
手続き上は申請して専門家の判断を仰がなくてはならないことになっている。従って、現時点での事業者の瑕疵と明確に言えるのは、
「申請手続きを取っていなかった」ということに限定される、と明治製菓では考えたのかも知れない。

なぜ、自主回収に踏み切ったのかは分からないが、もし自主回収しなかったとしても、
安全上のリスクが懸念されない場合には、官庁の側が回収命令を出せるかどうかは微妙なところだ。やたらと回収命令を出すと、
法律の拡大解釈だと言われる。

(以下想像) ともあれ、
今回のケースでは製品に添加するGF2の製造に使用するインベルターゼの調製のために、黒麹菌の大量培養が必要だったはずだ。
であるとすると、とりあえず遺伝子組換え生物の産業利用にあたるかどうか、経済産業省に照会があったかも知れない。しかし、
核酸供与体と宿主が同一の生物で、相同組換えで遺伝子を改変する技術によって最終的にベクターも残らない場合には、
カルタヘナ法の規制対象外になる。いわゆる、セルフクローニングだ。

明治製菓では、製造プロセスベースではカルタヘナ法上の遺伝子組換え生物には該当しないので、
食品添加物としても遺伝子組換え技術を使用したことにはならない、と判断したのかも知れない。 (想像終わり)

おもわぬ落とし穴にはまりこんだような災難だが、まずは専門家の判断を仰ぐという行政手続きがある以上、
それをスキップすることはできないということだ(判断の結果はともかくも)。この問題、
他の食品メーカーにも波及する可能性があるように思う。

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# 明治製菓から”ナチュラルオカレンス”と言うキーワードでこのブログを訪ねる方が、
先月来いらっしゃいましたが、そういうことだったのでしょうか。