神戸大学・遺伝子組換え大腸菌投棄の一件、続報

神戸大学の遺伝子組換え生物の不法投棄の一件の続報。5/10の新聞各紙(神戸新聞、読売新聞、MSN産経ニュース時事通信等)
の報道によると、

     
  • 医学研究科の設けた外部有識者を交えた調査委員会(緊急問題調査委員会)報告がまとまったのでプレスリリース
  •  
  • 調査結果によると、久野教授の研究室では少なくとも平成14年(2002年)4月以降は、
      不活化していない組換え大腸菌廃液などの投棄を行っていた
  •  
  • 他の研究室では、そのような事態は確認されなかった。
  •  
  • 教授の指導の範囲による投棄かどうかは未確認。
  •  
  • 5/10付けで全学の組換え実験凍結を解除。
  •  
  • 再発防止策を公表(読売新聞)
  •  
  • 再発防止のため、外部委員を交えて法令順守を調査する「神戸大バイオセーフティ統括管理委員会」
      を既に設置したことなども明らかにした。(神戸新聞

とのこと。

プレスリリースの意図は、事実関係の調査が終了したことと再発防止策を策定したことの公表にあると思うのだが、
報道機関が切り取ったのは「6年前から不法な投棄が常態化していた」と言う点。再発防止策の策定を伝えたのは2紙のみ。
神戸大学には気の毒な報道ぶりだ(なので、今回は記事を引用しない)。

今後の展開としては、文部科学省に事実関係と再発防止策を報告、文部科学省で報告内容を検討(調査不十分な場合は再調査、
対応策の練り直し)、そして、相応の行政処分または刑事告発という段取りになるだろう。

ちなみにカルタヘナ法の施行は平成16年2月19日からなので、カルタヘナ法に関して違法行為と言えるのはそれ以降。
それ以前のガイドラインは「組換えDNA実験指針(平成十四年文部科学省告示第五号)」なので法的拘束力はない。

 



 

何ですね、再発防止策の眼目が”法令順守を調査する「神戸大バイオセーフティ統括管理委員会」”というのはどうなんでしょう。
事故調査を通じて原因を究明し、再発防止につなげるのは基本ですが、法令遵守を事後点検する委員会では、実効性に問題がありそうです。

それよりも、ルールを守らせるには、まず業務を担当する方々がルールを知らないといけません。
知らないものは守りようがありませんから。

(あ、地震だ)

実際、どのような再発防止策をとるのか興味深いところです。

というところで、神戸大学のホームページを見ると”お知らせ
が出ていました。極簡単な内容なので、概要版でしょう。これによると、再発防止策は、


 

(実施済み)

 
       
  • 拡散防止措置の現状確認
  •    
  • 教育訓練の実施(実験責任者、実験従事者)
  •  

 

(2)今後実施する再発防止策

 
       
  1. 新任教職員を対象とした研修会、部局長等を対象とした危機・コンプライアンスに対応した講習会、
        遺伝子組換え実験従事者を対象とした安全講習会などを行い、安全・科学技術倫理等の徹底を図る。
  2.    
  3. 個別の研究室における安全指導が不適切に行われることがないよう、
        複数の研究室が共同して安全教育を実施するシステムを確立する。
  4.    
  5. 遺伝子組換え実験施設の安全確保をさらに確実なものにするため、研究室内の遺伝子組換え実験に要する実験設備の点検評価、
        実験廃棄物の正確な分別と適正な保管場所の確保を進める。
  6.  
 


  (3)全学バイオセーフティ統括管理委員会の設置と施策

 

遺伝子組換え実験、放射性同位元素等を使った実験、動物実験等バイオ実験に係わる安全性を統括管理する目的で、
  3名の外部委員を加えた神戸大学バイオセーフティ統括管理委員会を4月16日に設置した。同委員会は研究担当理事が統括し、
  その下に安全委員会、放射性同位元素等管理委員会及び動物実験委員会を参加させ、法令遵守の状況を専門的観点から調査・
  検討し学長に報告するとともに、必要に応じ改善を求める。

とのこと。報道はされていませんが、教育訓練の重点化が再発防止策の骨子です。これなら理解できます
(肝心の部分は報道されないのですね。困ったものです)。問題は、
きちんと教育訓練できる知識を持ったプロフェッショナルな人材の確保かもしれません。これは意外と難しい。

一方、「全学バイオセーフティ統括管理委員会」というのはどうなんでしょう。上部委員会を作っても、教職員に対して指導・
命令する権限がないと、結局は研究担当理事に対する助言・勧告くらいしかできないのではないかと懸念されます。むしろ、
規制法のある実験について分からないことがあれば、すぐに相談できるワンストップサービス的な常設の窓口を作る方が物事は機動的に進みます。

現場のトラブルを減らすには、「何をどうする」という具体に常に神経が行き届くことが大切です。
(不断のトラブルシュートという意味ではカイゼンと似てるかもしれません。)

 

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