見出しを見て疲労のセンサーとして機能しているタンパク質を発見したのかと思ったが・・・。朝日新聞より。

疲労感じる原因たんぱく質を発見 慈恵医大教授ら


2008年9月4日3時0分

 疲れを感じる原因となるたんぱく質を、東京慈恵会医科大がマウスを使った研究で突き止めた。
 このたんぱく質は、徹夜や運動の直後に心臓や肝臓、脳などで急激に増え、休むと減る。元気なマウスに注射すると、急に疲れた。
疲労の謎を解く鍵として、科学的な疲労回復法の開発につながりそうだ。沖縄県名護市で開かれている国際疲労学会で4日、発表する。


 近藤一博教授と大学院生の小林伸行さんは、人が疲れると体内で増殖するヘルペスウイルスに関係するたんぱく質に注目、疲労因子を意味する英語からFFと名付けた。水があると眠れないマウスを、底に1センチほど水を張った水槽に一晩入れて徹夜状態にし、その直後に臓器を取り出し、FFの量を調べた。

 その結果、睡眠をとったマウスに比べ、徹夜マウスでは、FFが脳、膵臓(すいぞう)、血液で3〜5倍、心臓と肝臓では10倍以上も増えていた。2時間泳がせた場合も、同様に変化した。
 どちらも休息後は平常値に戻った。

 さらに、FFを元気なマウスに注射すると、大好きな車輪回し運動をほとんどしなくなった。疲れの程度に応じて増減し、かつ、外から与えると疲れが出現するという「疲労原因物質」の二つの条件を満たした。

 FFは、細胞に対する毒性が強い。心臓、肝臓で特に増えるため、過労に陥ると心不全や肝障害が起きやすくなる、という現象に関係している可能性が高い。

 人が疲れを感じる仕組みは、まだ十分解明されていない。
 運動疲労の原因とされていた乳酸は、運動すると筋肉中に増えるが、疲労の程度とは関係せず、筋肉に注射しても疲れが出現しないため、原因物質ではないことが数年前に実証されている。

 近藤教授は「FFは、疲労が起きるとすぐに反応するため、疲労に対し最初に働く回路だろう。正確な疲労の測定装置や、科学的な疲労回復法の開発につながる」と話す。(編集委員・中村通子)

 次は、”ヘルペスウイルスに関係”するFFを過剰発現する疲労モデルマウスを開発して抗疲労薬の開発か?あるいは、FFをノックアウトした疲れ知らずのマウスや新手の遺伝子ドーピング時代の始まりか?・・・とも思ったのですが、国際疲労学会のプログラムを見ると様子が違うようです。

国際疲労学会プログラムより

9:10 S2-03 Identification of novel HHV-6 latent protein associated with mood disorders and molecular mechanism of fatigue due to overwork

Kazuhiro Kondo

 新聞記事で言うFF というのが、"HHV-6 latent protein"であれば”ヘルペスウイルスに関係するタンパク質”ではなくて、”ヘルペスウイルスのタンパク質”と言うべきです。これは、内生の”疲労を感じる原因たんぱく質”ではありません。なぜならば、疲労を感じる仕組みはヘルペスウイルス(HHV-6)に感染していようが、感染していまいが、全てのほ乳動物にもともと備わっているものだからです。

 FFは疲労マーカーにはなるだろうし、外から与えると疲労が起こるのであれば疲労原因物質の”一つ” であることは間違いありません。問題は細胞内にFFが蓄積した場合に、内在性の遺伝子発現やタンパク質の相互作用がどう変わって、FFによる疲労シグナルを全身に伝えているか、です。
 外部から与えたFFが疲労を起こすのであれば、FFは哺乳動物がもともと持っている疲労を起こす信号伝達の経路の入口で、哺乳動物が元々持っている疲労物質と同じように作用しているはずですから。

 疲労タンパク質の本命は、”FFと相互作用する動物側のタンパク質”に対して、信号伝達経路の上流で相互作用するタンパク質、でしょう。

人気blogランキングへ←クリックしていただけますと筆者が喜びます!