先のエントリーにコメントを戴きました。

latent protein …「潜在タンパク質」

というのが,ヒトDNAに組み込まれた内在ウイルス遺伝子のタンパク質だとしたら,この記事で間違いではないのかも(いい文章ではないですが)と思いました。

とのことですが、うーん・・・。私はウイルスの専門家ではないのですが、教科書的にはHHV6などのヘルペスウイルスのゲノムは2本鎖の線状DNAで、核内に局在します。ですので、相同組換えでヒトの染色体内に内在化(integration)しないとは言い切れないのですが、なにせヘルペスウイルス属のゲノムサイズは一般的に120 kbp以上(HHV6Aでは159,321 bpというのがあります。こちら)とウイルスとしては巨大な方なので、よくあるレトロウイルスの内在化のような現象は起こりにくいのではないかと思います。

・・・とおもって調べてみると、そう言う内在化の事例がありました。こちらなど。

1: Daibata M, Taguchi T, Nemoto Y, Taguchi H, Miyoshi I.
Inheritance of chromosomally integrated human herpesvirus 6 DNA.
Blood. 1999 Sep 1;94(5):1545-9.
PMID: 10477678 [PubMed - indexed for MEDLINE]

2: Morris C, Luppi M, McDonald M, Barozzi P, Torelli G.
Fine mapping of an apparently targeted latent human herpesvirus type 6
integration site in chromosome band 17p13.3.
J Med Virol. 1999 May;58(1):69-75.
PMID: 10223549 [PubMed - indexed for MEDLINE]

3: Daibata M, Taguchi T, Kubonishi I, Taguchi H, Miyoshi I.
Lymphoblastoid cell lines with integrated human herpesvirus type 6.
J Hum Virol. 1998 Nov-Dec;1(7):475-81.
PMID: 10195269 [PubMed - indexed for MEDLINE]

などなど。しかし、いずれもレアケースなので、レトロウイルスの内在化のように誰にでも起きている現象という訳ではない模様です。つまり、HHV6に感染しているヒトは少なくはないにしても、内在化を起こしているケースは希であると考えた方が良いでしょう。

となると、先のニュースのlatent proteinの一件は、ヒトゲノムに内在化したHHV6由来のタンパク質に限定されるものではなく、やはり、ヒトに感染したHHV6に由来する”HHV6のタンパク質”と言うべきだと思います。

また、HHV6は慢性疲労症候群との関連も言われておりますが(因果関係はまだ決定的ではありません)、このblogでも取り上げた新聞記事から得られる情報で、FFがヒトの一般的な疲労のセンサーになっているという解釈はしない方が良いと思います。

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