農林水産大臣は辞任、事務次官も辞任(一部報道では更迭)、と言うドタバタの一日。

 それで、結局、お米に対する消費者の不安は解消されたのだろうか?というところは疑問のまま。

 三笠フーズによる非食用米の偽装は平成17年頃から。農林水産省による事業者名の公表は、それ以降に関与した下流の事業者まで全て。
どう考えても、すでに消費された分が相当量に上る。

 岡目八目かも知れないが、公表に当たっては時間軸に対する考慮が欠けていたように思う。過去において、実質的に健康被害の出ない濃度の有害物質が含まれた米が流通していたとして、既に消費されてしまった分については、誰にも手の打ちようはない。不安に思う”気持ち”は分からなくはない。しかし、それは、もう不安に思っても誰にもどうしようもないことなのだ。アフラトキシンB1の含まれた米を消費してしまったとしてもそれは同じこと。
 もう不安に思っても仕方がない。

 今や、公表された事業者の製品を買わないという対応は、手遅れだし、今後は買わないという方針を立てたところで他の事業者の方が安全だと言う根拠はおそらく何もないし、その対策は食の安全にも安心にも関係はない。つまり、過去において流通してしまった事故米に関する事業者名の公表は、マスコミの興味をかき立てる以外には何の役にも立たないということ・・・というか、何の役にも立たない。

 そう言う意味では、事業者名の全面開示は、それによって農林水産省が免責される訳ではないし、新しい火種を生んだように思う。その昔('96年頃?)、カイワレ大根からO157が検出されたとかされないとかで、当時の菅直人厚生大臣が事業者名を公表して、結果として訴訟になって国が敗訴した事件が思い起こされる。

 今回も、訴訟を準備している事業者があると聞く。しかし、風評被害で訴訟を起こす場合は、
一般的に被害額に関する挙証責任は訴訟を起こした側にある。それには、自主回収による逸失利益は含まれないはず。
 今回は倒産した事業者はまだないので、今の時点での提訴では勝つ見込みはあまりないように思う。

 以上、当事者ではないので岡目八目として記録。

 今回の事案について言えば、もし仮に、私が農林水産省で事業者名の公表に関する調査を命じられたとしても、すでに消費されてしまった分については公表する必要はない、と考えるだけの余裕はあっただろうか。そう自問すると、調査の現場で、公表する必要はないと強く主張するだけの自信はない。まだまだ弱いな、私も。

 ちなみに、日本人の死因のトップはがん。若齢で発症したとしても、アフラトキシンB1の摂取との因果関係はまず証明できないだろう。
 我々の日常は微量の発がん物質に囲まれているのだから。摂取してしまっても不安に思うことはないし、不安に思うこと自体、生活の質を下げてしまう。発がん物質が怖ければ、熱々の料理やアルコールは摂取しないことをお勧めする。どちらも発がんリスクがあるのだ。

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