温故知新のプロトコルの紹介。

 昔々、GIBCO-BRLのホームページでPEG沈殿によるDNAのサイズフラクションの方法を書いた短い論文が出ていた。1998年にダウンロードしたと思しきタイムスタンプのPDFが手元にある。

 今でも掲載されているかな?と思ってGoogle scholar調べてみたらまだあった。

http://www.invitrogen.co.jp/focus/181027.pdf

 吸収合併で会社はGIBCO-BRLからInvitrogenに変わってしまったが、一応ジャーナルと言う位置づけだからか、出版された論文のサポートは続いている模様。

 さて、この論文で紹介しているPEG沈殿は一風変わっている。大抵のプロトコルは1.5 M以上の濃度で食塩を入れるのだが、このプロトコルでは30 mMという低濃度の塩化マグネシウムを入れる。つまり、PCR産物をPEG沈後にシーケンス反応に持ち込みたい場合やライゲーションに持ち込みたい場合にも、必ずしも70%エタノールなどで洗う必要が無いので、これは結構便利だ。勿論、丁寧にPEGまで除去したいのであれば、Phenol/CIAA処理か市販のカラムでも使わなければいけないが、70%エタノールでリンスするだけでもdNTPやプライマーの持ち越しはきれいに除去できる。

 また、この論文ではPEGの濃度依存的にDNAのサイズフラクションがかかることを示している。私は30 mMの塩化マグネシウム液を30% PEG, 30 mM MgCl2溶液とは別に作っておいて、Mg++のイオン濃度は変えずにPEG濃度のみ下げていくことでPEGの最終濃度を15-7%くらいの間で振ってサイズフラクションをかけている。

・・・なんに使えるのか?PCRの際にサイズの小さなextra bandが増えてダイレクトシーケンスに差し支えそうなときに、とか、PCR産物をプライマーに仕込んでおいたサイトで制限酵素処理して、小さな断片を除去したいときには便利。
 アガロースゲル電気泳動ほどの分解能はないのでサイズの近いDNA断片の分離には使えないものの、小さなDNA断片を除去したいときには電気泳動要らずなので手っ取り早い。

 ランニングコストも1サンプルあたり数円〜十円くらいなので、シーケンスの前処理としては、ExoSAPよりも安いし、どのPCR産物の精製カラムよりも安い(もっとも遠心と上澄みの除去と言うステップがあるので大量処理にはあまり向いていない)。

 けれども、最近はあまり出番が無いなぁ。考えてみると、このところプラスミドのシーケンスばかりだったので、今日PCR産物のダイレクトシーケンスをしたのは3-4年振りだった。

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