10/19 放送 「世界同時食糧危機(2)食糧争奪戦〜輸入大国・日本の苦闘〜」のまとめ
http://www.nhk.or.jp/special/onair/081019.html

  • 穀物価格上昇の要因
    • 中国・インドの輸入急増
    • 投機的資金の流入
    • 穀物増産が人口増加に追いつかない
  • 業界第2位の味噌メーカーの苦闘
    • 味噌メーカーの値上げ交渉
    • 1.8万トンのダイズを年間に使用
      コスト削減のみでは限界→安値で調達できるタイミングで購入
    • リーマンショックで副社長はダイズの下落を予想→11ドル前後で買入を商社に指示→思ったほど下がらず調達不調
    • アメリカの農家は契約に応じなくなってきた→バイオ燃料用トウモロコシへ転換。
    • 安定供給できる新規調達先を南米に求めつつある→ブラジルは外国企業の進出を制限。→パラグアイに着目。
    • 20トンのパラグアイのサンプルで検査
    • 品種の色調に問題→改良を要望。
    • しかし当面は無理→中国・黒龍江省での調達へ
    • 中国・黒龍江省は豊作。政府の輸出規制はあるか→地方政府では問題ないが、中央政府の対応は分からない→国内向けが優先ではある
    • 中国の港湾には国内向けの備蓄用サイロがある。
      トウモロコシは輸出制限がある。ダイズは不確定。
  • ウクライナにおける農地獲得競争
    • ダイズ生産はアメリカ、ブラジル、中国で世界生産の90%
    • あとは他の地域で栽培面積を増やすのみ→ウクライナでの栽培
    • ウクライナには耕作放棄地が増えている→日本の農家が進出している(青森で100 haの耕作をしている)。
      300 haを借りる契約。← 日本の商社は及び腰。→出遅れて5 haしか借りられなかった。
    • イギリスの実業化(Landcom)が同様のアプローチ。土地を囲い込み。GPSで測位、データベースに登録。12万haを確保。機械の稼動もコンピュータで管理。
      投資家から出資を募る。
    • 輸出先は、アラブ、中国、日本など資金のある輸入国。
      ウクライナの治安の悪さがボトルネック
    • フランス、アグロKMR社も進出。(フランスが小麦の輸入国に?)
    • カナダ、ユニレム社。アラブに輸出
    • ルイドレファス社、グレンコア社がランドコムと交渉。→ヨーロッパEU域内で家畜飼料?
  • 組換え作物の役割(南アを例に)
    • 農地拡大→8%/年、一方、消費拡大→55%/年
    • 足りないので→遺伝子組換え技術で増収をねらう
    • 南ア→トウモロコシが主食。作付けの60%をGMに転換。
    • Btコーンで特定の生産者は50%の増収。全土でも40%増収。
    • アメリカ、モンサントの品種を使用。主流はRRと説明。
    • 南アでも南部乾燥帯では増収できず。従来品種の40%しか取れなかった。伝統農業への回帰も検討。
  • 日本と遺伝子組換え作物
    • 讃岐うどんを例示→小麦の高騰の原因→オーストラリアに依存→オーストラリアは5年間干ばつ
    • オーストラリアでは乾燥ストレス耐性の遺伝子組換え小麦の開発中(アデレード大学)←研究者「リスクが無いとは言えないが冷静に判断すれば受け入れてもらえるだろう」
    • 生物研もちょこっと紹介
  • 輸入がダメなら米がある
    • コメ粉の利用
    • 飼料イネ→休耕田で飼料イネ品種を栽培
    • 地元養鶏場に出荷←トウモロコシ価格は4倍に高騰、コメとの価格差縮小
    • 黄身が白っぽい→差別化
    • 休耕田100万haで飼料米を作ればトウモロコシの輸入は不要になる
    • 作物研の超大粒、多籾数の品種を照会。従来比150%の増収
  • まとめ
    • 皆さんはどう考えますか?
    • 家庭の生ごみ調査→28%が捨てられている。

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なんだか半端な番組だ。次の疑問が残る。

  1. なぜ、味噌メーカーは遺伝子組換えでないダイズを調達する必要があるのか?
  2. パラグイアイの品種では何故いけないのか?(品種の違いを埋めるような加工技術がない?)
  3. 南アの乾燥帯で遺伝子組換え品種の導入に失敗したが、これはそもそも遺伝子組換え技術とは関係ない。外国の品種を導入する際に、栽培試験をきちんと行って地域への適応性を確認しておかなかったためではないのか?農学的には初歩的なミスのようだが、なぜそれが問題になる?南ア全土では140%の増収になったというのに。
  4. トウモロコシに代えて飼料米をというが、コメはトウモロコシよりもタンパク質が少ない。重量で等価な国内産量があったとして家畜飼料として完全に代替できるのか?番組では鶏を取り上げていたが、濃厚飼料を必要とするのはウシやブタでも同じこと。タンパク質所要量としては足りないのではないか?

話はちょっとそれる。
畜肉や穀物の輸入は、”窒素の輸入”であるというのはよく知られていると思う(環境省のホームページにもある)。一見、肉や穀物を輸入しないで済めばそれに越したことは無いように思えるのだが、肉や穀物を自給しようとすると、それらの生産のためには窒素肥料が必要になる。

窒素肥料も全部自給できれば良いのだが、それができないので窒素肥料の輸入量が増えることになる。この場合、農畜産物の国内生産の過程では窒素分が100%作物に吸収される訳はないし、家畜の排泄物としても放出されるので、日本の土壌や水系にこれまでよりも余計に窒素分が放出される恐れがある。

・・・となると日本の窒素の収支を考えると、環境中に無駄に放出される窒素分は海外に置いてきて、エッセンスだけを肉や穀物として輸入した方が”日本の”環境には優しいかも知れないのだ(定量的なデータは専門家に譲ります)。
# 畜肉ではなく魚やクジラをタンパク源に求める場合には、窒素分の集積による環境問題へのインパクトはずっと控えめだ。しかし、再生産可能な資源かどうかといえば大いに心許ない。

窒素の例だけを取り上げたが、リン酸塩やカリウム塩についても、肥料として輸入する場合には似たような問題が起こることが考えられる。

食料安全保障において、調達先を多様化する意味で自給率を上げるのは良いと思うのだが、生産資材の調達先の多様化や、廃棄物や家畜排泄物の処理にも目を向けてパッケージとしての施策にしておかないと、食料自給率を上げたことによるしわ寄せがどこかに来るような気がしている。

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