ダイズ・ゲノムのドラフトシ−ケンス公表

アメリカエネルギー省(DOE)の研究グループがダイズ・ゲノムのドラフトシ−ケンスを公表(2008/12/08)。年内発表が目標だったということなので、ほぼ予定通りの進捗なのでしょう。

データは、以下のURLから
http://www.phytozome.net/soybean

プレスリリースはこちら。
http://www.jgi.doe.gov/News/news_12_08_08.html

ダイズはwhole genome shotgunで配列を決めた生物種の中では最大級のゲノムサイズだろう。USDAのファンドではなく、DOEが主導したプロジェクトであるところに、アメリカに於けるダイズの地位が透けて見える様に思う。以下は、プレスリリースより。

”Soybean not only accounts for 70 percent of the world’s edible protein, but also is an emerging feedstock for biodiesel production. Soybean is second only to corn as an agricultural commodity and is the leading U.S. agricultural export.”

"According to 2007 U.S. Census data, soybean is estimated to be responsible for more than 80 percent of biodiesel production."

食料というよりは、戦略物資なのだ。なお、日本のNEDO経産省系の独立行政法人)の文書でも次のように紹介されている。

"DOE JGI が大豆ゲノム配列の解析に関心を抱いているのは、大豆が、再生可能な代替燃料の中でも最もエネルギー含有量の多いバイオディーゼルの主要な原料となるからである。"

http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/1017/1017-07.pdf

なお、農水省農業生物資源研究所関係者による米国ダイズ・ゲノム研究の調査報告と、この分野に於ける日本の研究方針等については以下の文書が公表されている。
http://www.s.affrc.go.jp/docs/kankoubutu/foreign/no46.pdf

我が国のダイズの自給率は5%程度。食用に限っても20%程度。いくら国内でダイズ・ゲノム研究に力を入れても、そして、それが育種に利用され、研究成果が国内生産に還元されたとしても、国内消費されるダイズの最大でも5-20%程度の消費量に対する幾ばくかの生産性の向上にしか反映されないことを考えると、大規模な投資を必要とする全ゲノムの解析は経済的な波及効果から見て、非常に説明し難い。それよりは、全ゲノム情報はアメリカで決定されたものを利用し、日本にとって特に重要な形質に焦点を絞って研究を進めた方が効率的。

第二次世界大戦でも実証されたように、米国に物量作戦で対抗するのは無駄ですから。

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アメリカがダイズをエネルギー作物でもある戦略物資と位置づけるのであれば、当然、バイオエタノール原料であるトウモロコシも戦略物資と言うことになる。

エネルギー作物の普及は石油への依存を軽減することにより、アメリカの中東への発言力の強化につながる。ロシアやアメリカ以外の産油国は概ねイスラム教国なので、ロシアもイスラム教国も嫌いなアメリカ大統領らしい施策ではある。

ただ、その施策の結果はといえば、現状でも、これらの作物に食料を依存することで、特に途上国では食料価格の高騰に由来する政情不安が起きている。政情不安が広がって政府が弱体化した国では得てして治安が悪くなる。

・・・これではかえって、テロの温床になっている気がするのだが。軍事産業に対する補助金投入の口実がほしかった訳ではないと思いたいのだけれど。

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[業務用覚書]

おかしいな。 deletion mutantのはずなのにPCRで遺伝子のサイズを確認したら野生型の方がサイズが小さい?

野生型とリファレンス系統の増幅産物のシーケンスをしておかないと、PCRで何が増えてるのか今ひとつ信用できないではないか。困った困った。しかも明日は出張だ。