A simple and effective method for inducing plant pluripotent stem cell was developed.... really?

 表題は、ウソです。

 検索エンジンで”植物”と”iPS”をキーワードにこのblogにたどり着いた方がいらっしゃいますのでちょっと乗ってみました。

 植物の場合は、体細胞から分化全能性のある細胞を増殖させることは、30年以上も前から普通に行われてきております。それも、2,4-dichlorophenoxyacetic acid (2,4-D)のような安価な合成オーキシンを含むMurashige & Skoog培地に種子や組織片をおいて置くだけのことです。

 それだけで分化全能性のある細胞の固まり(カルスといいます)を誘導できます。遺伝子の導入も、ウイルスベクターも必要ありません。クローンを作成しても倫理的な問題も何等発生しません。

 植物は動物とは違って、茎の先端や根の先端、表皮の内側など、体の様々な部分にある分裂組織(meristem)で細胞分裂を生涯続けます。例えば樹齢5,000年の屋久杉でさえ、枝先や根の先端、樹皮の下の層では新しい組織を作り続けており、枝先を適当な部分で切り取って地面にさせばクローン個体になります。

 つまり、植物の体細胞には生涯を通じて、柔軟にプログラミングされている部分が分裂組織として固まって残っており、植物ホルモンで簡単にリプログラミングできるのです。ですから、植物の場合はわざわざstem cellを誘導するまでもありません。

 ちなみに、アメリカ、Cold Spring Harbor laboratoryでは幹細胞研究の一連の動きの中に、植物の幹細胞研究も位置づけられているようです。今年のCold Spring Harbor Symposia (先週でした)でも採り上げられております。

http://symposium.cshlp.org/content/early/recent

 ちなみに昨年のスピーカーのインタビューはこちら。

http://meetings.cshl.edu/chats/symposium08/index.htm

 MP3やWindows videoで見られます。

 ま、私共、日本の植物科学の研究者は謙虚なのか、「幹細胞研究は科学として重要な領域だ。動物の幹細胞研究は重要だが、植物の幹細胞研究もそれに劣らず重要だ。」なんて言う人は見たことがありません。

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