セルロース合成遺伝子はsiRNAで制御される

ちと旧聞。しかし、覚書として記録しておく。

植物の細胞壁は主にセルロースからできている。セルロースの合成は細胞膜に局在するCesと呼ばれる一群の酵素が行っていることが知られている。しかし、植物の細胞は何時までも無制限にセルロースの合成を続けている訳ではなく、適当な”潮時”になると合成を止める。・・・でないと、細胞壁は際限もなく分厚くなってしまう。

これまで、どうやって植物細胞が細胞壁の合成を止める”潮時”を感じ取るのかが分からなかった。Heldらはオオムギの葉でセルロース合成を行わせているCesA6遺伝子がsiRNAによる発現制御を受けていることを初めて明らかにした。

Held, M.A. et al. Small-interfering RNAs from natural antisense transcripts derived from a cellulose synthase gene modulate cell wall biosynthesis in barley. Proc Natl Acad Sci U S A (2008).doi:10.1073/pnas.0809408105

* この論文はOpenAccessですのでご家庭からでも読めます。・・・読まないか。

面白いことにCesA6遺伝子が、そのsiRNAでCesA6の転写産物量が減った際には、協調的に細胞壁の合成にあたっている他のCesA遺伝子、Csls遺伝子、GT8 glycosyl transferaseの転写産物量も減少する。オオムギではBarley Stripe Mosaic Virus (BSMV)というウイルスが、Virus-induced Gene Silencing (VIGS)を介在した遺伝子発現制御のツールとして有効であることが示されており、この論文でも利用されている。

さて、オオムギの葉ではsiRNAによるCesA6遺伝子の転写後制御が行われているのだが、他の組織でも同様の制御が行われていることだろう。オオムギの種子は他のイネ科作物と比べて細胞壁が厚いのだが、種子での制御はどうなんだろう?等など、謎は尽きない。意外と、オオムギの種子の細胞壁が分厚い理由はこのあたりの制御にかかっているのかもしれない。

また、これは他の植物でも同様に違いない。今後、色々な発展が見込まれるので目が離せない。

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