勘弁していただきたい一件。行政手続きはきちんと完結してほしいものだ。朝日新聞より。

厚労省、意見公募やりっ放し 早大院生の指摘で結果公表

2009年2月7日7時31分


 省令などの案について国民から広く意見を募る意見公募(パブリックコメント)の制度で、厚生労働省が行政手続法の規定に反して、結果の公示を怠っていたことが早稲田大学の大学院生の指摘でわかった。2カ月を超えて未公示が続いた事例だけで48件に上る。同省は6日、チェック体制を整える方針を発表した。

 意見公募の手続きは行政手続法で法制化され、06年4月に施行された。同法では、意見公募の手続きを実施して省令などを公布した場合には、それと同時期に、寄せられた意見やそれへの対応などをウェブサイト「電子政府の総合窓口」に公示することを省庁に義務づけている。

 ところが、厚労省では、この結果公示が長期間にわたって行われていない事例が多々あった。早大の院生は、政治学研究科ジャーナリズムコースの授業「調査報道の方法」の実習課題として未公示の事例を調査。1月4日に厚労省にその理由を問い合わせた。同省は「現在、準備中」と回答し、同月9日以降、相次いで公示を始めた。

 朝日新聞の集計では、2月5日までの1カ月間に公示された同省と社会保険庁の意見公募27件のうち、18件が省令などの制定から2カ月以上も過ぎての公示だった。中には制定などから2年半も遅れたものもあった。

 同省によると、6日時点で、未公示がさらに38件あり、そのうち30件が2カ月を超えているという。大臣官房総務課の担当者は朝日新聞の取材に「担当課は失念していたのかもしれないが、それをチェックする体制がなかったのも反省点」と話した。


 早大院生の調査によると、国土交通省総務省環境省農林水産省なども意見公募の結果公示を怠っているケースがあり、理由を問い合わせた。そのためか現在、政府のホームページでは意見公募結果の公示ラッシュが続いている状況だ。

パブリックコメントパブコメ)は規制の改廃等に際して広く国民の意見を求める為の手続きで、役人や審議会の専門家だけではフォローしきれないようなルールの変更による波及効果を予め調整する効用がある。寄せられる国民の意見は、パブコメの結果の公表を見ればわかることだが、ピントが外れていたり、自分勝手だったり、意見聴取の趣旨にあわないものも少なくない。放置してしまいたい衝動もわからなくはないのだが、法律で定められた手続きである以上、決して蔑ろにしてはならない。役所が法律を蔑ろにしておきながら、一方で改廃した規制を守るよう国民に要求するのは筋が通らない。規制をする側もされる側も、法によって縛られている点はかわりない。

ちなみに、β-メルカプトエタノールを毒物指定した際のパブコメ案件番号495080028 「毒物及び劇物指定令等の改正に対する御意見・情報の募集について」は、意見募集終了が2008年6月13日。今日(2009年2月7日)現在、意見募集の結果は公表されていない。

この意見募集は、意見募集の期間も本来の30日間より短く、「本件政令等については、公益上緊急に公布する必要があることから、意見提出期間については、所定の30日以上を確保することは困難である。」という説明が付いている。

省令改正の際に、β-メルカプトエタノールの濃度の上限の規制値を設けていないため、これを含む廃液の処理量が増えて困っている研究室も多いことだろう。下水に流せないので廃液をタンク等にためることになるのだが、廃液をきちんと分別しておかないとβ-メルカプトエタノールの濃度が低くてもタンクが大きければ、それなりの量の硫化水素が発生してしまう可能性がある。しかも、硫化水素は比重が大きいのでタンクを換気の良くない部屋に保存すると床に硫化水素が溜まる。

 硫化水素といえば、気になるニュース。毎日新聞より。

島根大の硫化水素発生:防止策、タンクごと業者処分へ /島根


 ◇硫化物と酸性溶液混ぜた可能性

 島根大松江キャンパス(松江市西川津町)で硫化水素が発生した事故で、同大は硫化物の含まれたアルカリ性溶液を、酸性溶液に混ぜたことによって硫化水素が発生した可能性が高いとみて、再発防止策として、廃液を混ぜずに、タンクごと処理業者に渡すことを決めた。

 同大によると、廃液処理をしていた職員(50)が、実験で発生した硫化物を捕捉したアルカリ性溶液40リットルを、酸性溶液350リットルが入ったタンクに、酸性濃度を下げようとして混ぜ、硫化水素が発生した可能性が高いという。同大は廃液の搬出表などを詳しく調べて原因を究明する。

 同大は事故があった3日に「事故対策特別委員会」を設置。専門家らと硫化水素が発生したタンクの撤去方法を検討、松江署、同市防災安全課、松江保健所などと協議して撤去を始める方針。現場の「環境安全施設」は立ち入り禁止で、周辺のモニタリング調査を続けている。【御園生枝里、岡崎英遠】


毎日新聞 2009年2月5日 地方版

 この「実験で発生した硫化物」だが、硫化水素が発生するような還元状態の硫黄を含む物質ということになる。島根大学の調査結果を待たないと原因については何とも言えないのだが、少量であれば危険性の低い低濃度の毒物でもまとまると結構な危険性があるということだろう。

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