数日前のネタ。読売新聞より。

日本脳炎の新ワクチン承認、従来より副作用少なく

 厚生労働省は23日、阪大微生物病研究会(大阪府吹田市)が開発した日本脳炎ワクチン「ジェービック5」を正式に承認した。

 原材料にマウスの脳を使用した旧ワクチンより、副作用が少ないとされる手法で製造されている。今夏の流行シーズンを前に、5月に発売を開始する見通し。

 日本脳炎ワクチンは定期接種の対象。しかし、重い副作用が出たとして、同省は2005年に、旧ワクチン接種の積極的勧奨を控えるよう各市町村に勧告。そのため、全国的に乳幼児の接種率が低下、現在年間10例にも満たない日本脳炎患者の増加が懸念されていた。

 比較的副作用が低い新ワクチンによる定期予防接種の勧奨を再開するか、厚労省は26日開かれる会合で検討する。しかし、積極的な定期接種を実施した場合、生産量が限られていることから供給量不足も予想されている。

(2009年2月23日20時37分  読売新聞)

従来の日本脳炎ワクチンは、日本脳炎ウイルスに感染したマウスの脳を原材料に使用している。原材料そのものが哺乳動物の体組織であり、抗原の精製の度合いが下がると、現在の技術水準では検出限界以下のマウスの脳由来のタンパク質などが抗原として混入してくるリスクがある(関連資料はこちら)。

従来の日本脳炎ワクチンでは、ごく希に急性散在性脳脊髄炎(Acute disseminated encephalomyelitis: ADEM)という致死的な副作用をおこすことが知られており、マウスの脳由来の物質が抗原となり、一種の自己免疫のようなアレルギー反応が起こっているのではないかと疑われている。実際の所、症例が少ないので(これ自体はありがたいことだが、)あまり詳しくは分かっていない。

阪大微研で開発された新しいワクチンはVero細胞という、アフリカミドリザルの腎組織由来の株化培養細胞を使用して、ウイルスを増殖させているらしい。仮に、夾雑物が抗原になったとしても、脳神経系に対する障害は起こりにくいと期待されるが、何分、霊長類の細胞なので他のリスク備えておくべきだろう(関連資料はこちら)。

その点、ニワトリ受精卵でウイルスを増やすインフルエンザ・ワクチンは卵アレルギーの人以外に対してはアレルギーのリスクは小さいし、自己免疫はおこさない。そのかわり、有精卵の確保など他の問題点はある。

将来は、UMNファーマのように遺伝子組換え技術を使って、昆虫培養細胞でコンポーネントワクチンを作ってしまった方が良いのではないだろうか。
# 新型インフルエンザ対策では既にそういう取組もあるし。

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