いやはや。

試験用カビが入れ替わり、経産省  遺伝子解析で判明

経済産業省は13日、製品評価技術基盤機構(NITE、東京)と産業技術総合研究所産総研茨城県つくば市)がともに企業などに試験用に供給していた2種類のカビの「菌株」が入れ替わっていたと発表した。

 菌株は菌類などを純粋に分離し培養したもの。今回の2種類の菌株は、防カビ製品や防カビ剤などに対するカビの抵抗性試験で使用。黒こうじカビの一種で遺伝的な違いはわずかのため、産総研は試験に大きな影響はないとみている。

 NITEが品質管理のため行った遺伝子解析で入れ替わりが判明した。産総研とNITEによると、詳しい記録はないが、約50年前に米国から導入する過程で入れ替わりが起きたと考えられる。

 産総研は2006年まで、NITEは02年から企業や研究機関などに菌株を提供。


2009/03/13 20:08< 【共同通信

もともとの提供元で菌株が入れ替わってしまっていてはなかなか気づかないものだ。産総研公表した情報によれば、入れ替わっていた菌株はFERM S-1 (ATCC 6275)とFERM S-2 (ATCC 9642)。ともにATCCから分譲されたものとのこと。

驚いたことに、ATCCのデータベースによればどちらも現在の学名はAspergillus nigerではなくAspergillus brasiliensis Varga et al.という別種になっている。遺伝子型の情報は文献をあたらないと分からないが、50年前に産総研では菌株を受け入れた際には、改めて遺伝子型のタイピングは行なわなかったということだろう。しかも、ATCCの記載には"deposited as Aspergillus niger"とある。

・・・ええと、ひょっとしてATCCに寄託された際に、既に種のレベルで取り違いが起きていた可能性さえある。ATCCの記載では、これまでAspergillus brasiliensis Varga et al.で抗カビ性のテストをしてきたのだから、それでよいということになるのだろう。

しかし、JISの試験法では”アスペルギルスニガー”という種名で指定をしているようなので、これまで試験に使用してきた”もの”が、報道されているような菌株レベルでの取り違いでは済まず、実は別種だったということになりはしないだろうか?もしそうであれば、これまでの試験は、報道されているような菌株の取り違いがあろうが無かろうが、全て無効だったということになりはしないか?おそらくJISの規格の方を実態に合わせる方が合理的な解決だと思うのだが。

報道されているよりも、実は影響は遥かに大きいかもしれない。

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