何かが加わっていないことや、何物かではないことが、ある製品を他の製品から差別化する際にセールスポイントとして利用されることがよくある。

食品でよく見かける「無添加」、コーヒー飲料の「無糖」にカフェインレス、ビールなどのプリン体カットに、低カロリーというのもそうかもしれない。「栄養満点」というのがセールスポイントだった時代があったことを考えると、そんなにあれもこれも入っていない食品を食って何になるのだろう?と不思議に思う。

この種の”売り方”をする場合、もともとの製品に入っていた添加物、糖、カフェイン、プリン体などは入っていない方がより良い物、それ自体は有害ではないにせよ、望ましくはない物、という買い手の認識を誘う。何であれ、広告で声高に言っているのだから良い物に違いない、という判断停止の結果だろう。

# ”遺伝子組み換えでない”と言う表示もこれと同列だ。

今般の千葉県知事選挙では、元自民党の国会議員であった森田健作氏が「無所属」というブランド(”無印良品”のようなものだ)を掲げて、当選した。その一方で、選挙期間中も”自由民主党東京都衆議院選挙区第2支部の代表”であったらしい。

わかりにくい話なのだが、知事選の際の所属政党は、いわば”任意表示”のようなものらしい。つまり、”○○党”という支持母体や所属を掲げる場合は、選管に”党の所属党派証明書”の届出が必要だが、そういうブランドを表示しない場合は、その根拠となる”党の所属党派証明書”は必要ないということだ。

法律上、”無所属”というブランドが所属政党という属性を表すことになっていないこと、さらに政党が支持を表明していない場合、実際にはどこの政党に所属していようが”無所属”を標榜しても違法ではない、ということらしい。

しかし、実体論として”無所属”というブランドが、無糖、無添加と同じように、優良であることの証のように選挙民に受け止められているという状況を森田氏が熟知しているのであれば(多分、そうだろうが)、自民党支部の代表のまま”無所属”を標榜していた行為は、自らの利益のために選挙民を誤認させたものであるという指摘にも一理ある。

公選法違反に問うのは非常に難しいだろうが、公選法の精神に鑑みて、改正の議論を提起するという意味では、今回の提訴は意味があるだろう。

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