4月9日の朝日新聞より。

改良マウスで医療・バイオ産業を誘致

2009年04月09日

 米子市にある鳥取大学医学部が開発した、人の肝臓遺伝子を持つマウスを大量に作る技術を利用して、同県が医療・バイオ産業の誘致を進めている。医薬品開発に取り組む企業にとっては、改良マウスを使えばコストや時間を減らせるメリットがある。改良マウスが自然界で繁殖しないように、技術は「門外不出」にするため、同県産業振興総室は「医療・バイオ産業が鳥取に集積する可能性もある」と期待している。

 医薬品の開発では、通常、人への臨床試験前にサルなどの中型動物を使って実験を行う。改良マウスの導入によって、この過程が大幅に省略され、開発の可否の見通しを早めにつけられるようになるという。

 鳥取県は08年度に事業化の可能性を検討し、企業誘致につながる可能性がきわめて高い技術であると判断。09年度予算には、研究施設の整備を検討するための約500万円を盛り込んだ。

 県の構想では、施設は3階建て、延べ床面積千平方メートルほどで、鳥大医学部内に建設。マウスの育種室や遺伝子実験室などを設ける。総工費は5、6億円程度で、半分近くは国の補助を受けることを想定している。11年度の稼働開始を目指し、09年度末か10年度初めに着工するという。

 いまのところ、実験用マウスの育種を得意とする日本チャールス・リバー社(横浜市)が進出を検討しているという。県はほかの数社とも交渉を進めている。(井石栄司)

朝日新聞は今や、”遺伝子組換え技術”は品種改良の技術の一種と認識しているらしい、ということが伝わってくる記事です。

これまで朝日新聞では、遺伝子組換え作物を白眼視するような論調の記事が多かったように記憶しているのですが、その認識は私の邪心のなせる業、気の迷いだったようです。

自ら”社会の木鐸”を任じる大新聞が、世の中には善の遺伝子操作技術と悪の遺伝子操作技術があって、良い方の技術は「改良」、悪い方の技術は「遺伝子組み換え」・・・なんていう、身勝手な使い分けをする訳はないでしょうから、これまでの「遺伝子組み換え作物」も、今後は一貫して「改良作物」と呼んでくれることでしょう。

それとも、”遺伝子組換えマウス”と呼ぶと、イメージが悪いからと姑息に判断して「改良」と呼んだのでしょうか。”するめ”はげんが悪いので”あたりめ”と呼ぶとか、”アシ”はげんが悪いので”ヨシ”と呼ぶ、というようなもので。

「改良マウスが自然界で繁殖しないように、技術は「門外不出」にするため、」という理解は、法律上の拡散防止措置と、営業上の戦略を一緒くたにした書きぶりです。このような無理解に満ちた記事が公器の紙面を汚すとは悲しい限りです。

「改良マウス」なんて訳の分からないことを言っていないで、はっきりと”人間の遺伝子を持った遺伝子組換えマウス”と呼んで欲しいものです。技術そのものには、善の技術も悪の技術もないのですから。

折角の署名記事です。記者の見識を世に示すチャンスなのですから、もっと勉強しましょう。

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