細菌の生産するタンパク質毒素を利用した医薬品が幾つかある。有名どころではボツリヌス菌Clostridium botulinum)の生産する毒素を利用したシワ取りで有名なBotoxなどがそうだ。

ちょっと調べものをしていた際に、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)の産生するジフテリア毒素を利用した医薬品を見つけた。「ONTAK」(一般名:denileukin diftitox)という医薬品で、ヒトIL-2とジフテリア毒素のAフラグメントの融合タンパクだ。

ジフテリア毒素はA-B毒素に属するタンパク質毒素で、細胞内で毒性を発揮するA fragment (DT-A)と、細胞表面のレセプターに結合して毒素の引き込み役に当たるB fragment (DT-B)が結合した状態で初めて毒性を発揮する。A fragmentの発揮する毒性はelongation factor - 2 (EF-2)の失活によるタンパク合成阻害である。

一方、AあるいはB fragmentのみでは細胞に侵入できないため、単独では毒性を発揮しない。

A M Pappenheimer et al., “Diphtheria toxin and related proteins: effect of route of injection on toxicity and the determination of cytotoxicity for various cultured cells,” The Journal of Infectious Diseases 145, no. 1 (January 1982): 94-102.   

従って、このタイプのタンパク質毒素の断片は、全体としてのLD50が規制値に達していても、単体でのクローニングや発現はカルタヘナ法において大臣確認の対象とはなっていない。この点の二種省令の解釈についてはポジションペーパーが出されている。

ただし、ちょっと微妙な点がある。

A サブユニットについては、AB 毒素のA サブユニットをコードする遺伝子をネガテイブ選択マーカーとして含む認定ベクター又は安全性に於いて同等の認定ベクター由来ベクターを用いる実験等において、発現された蛋白が個体に毒性を発揮させるような遺伝子構築或いは発現の実験でない限り、大臣確認を必要としない。

逆を言えば、「発現させた蛋白が個体に毒性を発揮させるような遺伝子構築物あるいは発現の実験である場合は、大臣確認を必要とする場合がある」ということ。

ONTAKではT細胞への分子標的のためにIL-2を利用しているが、これに限らず、細胞表面のレセプターと結合してエンドサイトーシスで細胞内に取り込まれるペプチドであれば何でも、DT-Aとの融合タンパク質を作成する実験の場合は大臣確認実験に該当する可能性があることになる。

# あとはLD50と認定系との組合せ次第。

人気blogランキングへ←このへん、クリックしていただけますと、私も若干元気になるかもしれません。