コレステロール低下薬あるいはHMG-CoA還元酵素阻害薬として知られるスタチンに新しい効能2件。

その1、朝日新聞より。

高脂血症薬でインフル患者の死亡率低下 米学会で発表

2009年10月31日12時22分


 【フィラデルフィア=勝田敏彦】高脂血症の治療薬として広く使われているスタチンがインフルエンザ重症患者の死亡率をほぼ半減させることが、オレゴン州など米10州の保健当局の研究チームによる疫学調査でわかった。当地で開かれている米感染症学会で30日、発表された。


 発表によると、07〜08年、10州の成人計2800人の季節性インフルエンザ入院患者を調査。入院中か退院から30日以内の死亡率は、入院中にスタチンの投与を受けていた人は2.1%、受けていなかった人は3.2%だった。


 投与を受けていた人は、より高齢で心臓病などの病気にかかっている傾向があるにもかかわらず、死亡率が半分近くになっていたことから研究チームは「スタチン投与は死亡率の低下と関係がある」と結論づけた。


 スタチンには血中コレステロール値を下げる働きのほか、免疫抑制の効果もある。インフルエンザは、患者の免疫系がウイルス感染に過剰反応して重症化する
ことがわかっており、スタチンはこれを防いでいるらしい。またスタチン投与を受けていた敗血症や肺炎の患者の死亡率が低い傾向も知られていた。


 今回の調査は季節性インフルエンザに関するもので、新型の豚インフルエンザについては調べていない。しかし研究チームは新型の豚インフルエンザにも同じ仕組みで効果があると期待している。

 スタチンは遠藤章・東京農工大名誉教授が発見。さまざまな商品名で、高脂血症心筋梗塞(こうそく)、脳卒中などの治療・予防薬として広く使われている。発表したオレゴン州保健局のメレディス・バンデミーアさんは「抗ウイルス薬のタミフルに比べると、特に後発薬スタチンは安い。治療効果が実証されれば、途上国でのインフルエンザ対策に役立つのではないか」と話した。

疫学調査だけだと、メカニズムがわからないので”ふーん”という感じ。いわゆるサイトカイン・ストームの抑制効果なのでしょうか。しかし、そうだとしたら季節性インフルエンザにはあまり効かない様な気もするのですが。

もう1件、東北大のプレスリリースより。

http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/20091030_01.pdf

慢性腎臓病の悪化を防ぐ新たな治療法の開発
―タンパク質OATP-R を標的にした、スタチン内服による尿毒症物質の排泄促進が効果をあげる―

東北大学大学院医工学研究科・医学系研究科の阿部高明教授と慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市、冨田勝所長)の曽我朋義教授らの研究グループは
共同で、今まで根本的治療法のなかった慢性腎臓病の新たな治療ターゲットタンパク質OATP-R を腎臓で発見しました。
OATP-R
は体内に蓄積する尿毒症物質を体外にくみ出す働きがありますが、腎不全時には機能が下がっています。研究グループはOATP-R
の機能を上昇させる薬が抗高脂血症薬のスタチン類であることを見出し、スタチンを適切に内服することでOATP-R
タンパク質が増加して尿毒症物質を体外にくみ出すことができるようになり、臓器障害が改善することを発見しました。
本研究により腎不全の進行を抑制し透析導入にいたるのを遅らせる新たな治療法が開発されました

コレステロールで腎臓機能が良くない人には朗報かもしれません。作用も良くわかっていますし。ともあれ、スタチンと言っても製剤としては構造が違うものが多々市販されており、副作用もそれぞれなので臨床応用にはもう少し検討が必要でしょう。
かつて市販されていたセリバスタチンは安全性に問題があって販売中止に追い込まれたし。もともと尿中にはあまり排出されないようだけど、腎臓機能が低下している人におけるスタチン類の吸排も臨床試験でおさえておかないとね。

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