11/13に行なわれた行政刷新会議第3WGの理研SPring-8、植物科学研究事業とバイオリソース事業の事業仕分けのコメントが公開された(こちら)。

植物科学研究事業とバイオリソース事業へのコメントを一つずつ見ていこう。訳の分からないコメントには逐一反論する。

(植物科学研究事業)
●事業の必要性。事業概要から判断して妥当な基礎研究かどうか不明。大学における研究との違いを明確にすべき。全体的科学研究予算の配分との整理。

← 大学単独でメタボローム解析に取組んでいるところがあるのか?「妥当な基礎研究かどうか不明」と、研究の妥当性を判断する能力がないことを告白されてもなぁ・・・。

●応用研究については農水等にまとめて競争的資金へ。

← もっぱらアラビドプシスを材料にした研究に農水の競争的資金を投入することはありえないでしょう。それこそ支出の理由がたたないのでは?

●食料増産等に役立つ植物科学研究をうたっていながら、食料産業ニーズを意識しない基礎研究に陥っている。必要最低限の国費に抑えて、不足分は競争的資金でカバーすべきである。

← 食料産業ニーズを謳っているのであればたしかに良くない。もともと食糧増産には直結しない基礎研究なのだから(しかし、”陥ってる”って・・・)。だが、「必要最低限」という線引きをする合理的な方法は無い以上、恣意的な経費削減も可能ではあるけどね。

●他機関と強調すべき。

←完全長cDNAライブラリ作成を受託したり、イネには進出しないなど、特徴を生かして協調的に住み分けできていると思う。それから、「強調」ではなく、「協調」だね。

●収益向上可能な部分をカット。

← もっともだ。どこがカットできうるか具体的に指摘するべき。

●コスト削減の余地はある。アウトプットに対するコスト、絶対にやるべき基礎研究にどのくらい投じていくべきか、投じる額とアウトプットの関係の説明がない。

← 事業運営に関するコストは計算できるが、論文1本あたりのコスト計算は意味が無い。その計算でアウトプットとしての科学的に対する貢献の重要性が評価できるとでもいうのか?

●独法事業を極力減らすこと。NIAS との一本化も検討。

← NIASのミッションは農業生物の研究。ナズナはツールとしては使うが、それを主たる研究対象にはできない。そして農水省予算であるNIASの運営費交付金を充てる判断は文科省の権限ではできない。

●成果評価を明確に。また、運営費交付金全体の評価も明確に。

← 運営費交付金に関する理研の機関評価は文科省としてやっているはずだが・・・。しかも、評価結果は公表されているのでは?

●応用部分について収益増を見込むべき。

← そもそも、非営利団体なんだけどね。電話、鉄道、郵便と一緒にして欲しくない。

次に、バイオリソース

(バイオリソース事業)
●応用研究については各省庁を横串でまとめて競争的資金にするべき。政治主導が必要と考える。

← で、そうすると研究推進の効率が上がるというのだろうか?バイオリソースは生命科学の基礎研究のためのインフラ整備なのだ。

●ライフサイエンス研究に役立つバイオリソース拠点といいながら、産業ニーズを意識しない基礎研究が行われているので、必要最低限の国費投入に抑えて、不足分は科研費等の競争的資金でまかなうべきである。

← だから、生命科学の基礎研究のためのインフラ整備なのだ。科学技術政策の戦略上、基礎研究に対する研究資金投入は「必要最低限」に押さえるという方針を総合科学技術会議で決めた上で、その方針を徹底するなら仕方ないが、事業仕分け」のような総合的な戦略を欠いた議論で意思決定をして産業ニーズに研究リソースをシフトするべきではない。

●リソースの確保は国がやることにしても、一般に安く供給する必要はないのではないか。

← 大方のリソースの配布は大学、独法などのアカデミア向け。そうなると、その原資は税金。結局、リソースの提供元に税を投入して価格を下げるか、リソースの購入先に税を投入して購買力を底上げするか、の違いしかない。

そもそも、バイオリソースは研究のインフラだ。そのリソース開発はいわばアカデミアにおける道路整備のようなものだ。高速道路の無料化を公約した政党の「下請け」をしている仕分け人達は、一方ではSPring-8の利用料金を上げろといい、バイオリソースの価格を上げろという。本当にそれでいいのか?

●理化研の運営費交付金の適正さについて今一度精査する必要あり。

← それは独法の評価委員会でコメントすべし。

受益者負担を大幅に増やすべき。

← 大学、独法などが受益者である限り、原資は税金。結局、リソースの提供元に税を投入して価格を下げるか、リソースの購入先に税を投入して購買力を底上げするか、の違いしかない。一見、個別の事業の収支が良くなって見えるだけで税の使い道が変わるわけではない。

●必要性は認めるが、費用が妥当かどうかを検討すべき。

← リソースを値上げして収益を上げても原資が税なら個別の事業の収支が良くなって見えるだけで税の使い道が変わるわけではないのだよ。で、高速道路は無料化するんだね。

●成果評価を明確に。また、運営費交付金全体の評価も明確に。

← アウトプットは論文の本数で評価? それともインパクトファクターで評価? 配布点数で評価? で、結局それを金銭に換算する訳か。運営費交付金のことは独法の評価委員会でコメントすべし。

●コスト削減努力をすべき。収入増をすべき。

← コスト削減の努力は当然だが、収入増しても、それが税金の還流であれば個別の事業の収支が良くなって見えるだけだ。それでは税金の使い道が変わるわけではないのだよ。分かっていますか?で、高速道路は無料化するんだね。

●収益向上可能な部分をカット。

← そもそも、非営利団体なんだけどね。収益向上のインセンティブをどうする?

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