もとネタはuneyamaさんの食品安全情報blogと、日経バイオテクのFoodScienceの宗谷 敏さんの記事。

私は仕事の関係で、遺伝子組換え作物の動物を使った毒性試験に深い関心を持っている。そこに、前回のエントリーで書いた論文を見てしまったものだから、少々頭に来ているところ。

 関連情報を探してみると、4月16日の内閣府食品安全委員会の遺伝子組換え食品等専門調査会の議事録でも、この論文のことが取り上げられている。もっとも、論文で採用された統計手法の妥当性については疑問があるが、今後専門家の判断を仰ぎましょう、と言う扱いであった。そのうち、日本でもこの論文の再評価が行われることになるのだろう。

 一方、そうこうしているうち欧州食品安全機関(European Food Safety Authority=EFSA)から、前回のエントリーで書いた論文の統計手法についての再評価が6月28日に公表されたことを、 FoodScience食品安全情報blogで知った。そこで、FESAのreviewの要約を読んでみることにした。

※ ここで、すごいなーと思うのは、FESAの評価結果に対して疑念を呈する論文が公表されるなりEuropean Commissionの諮問に応じて、徹底的にreviewして放置してはおかないというFESAの姿勢である。その姿勢に、 EUの食品安全に関わる専門家集団としてのプライドを見たような気がする。報告書の分量も多く結構な作業量なので、わざわざそこまでやろうと言う姿勢には脱帽する。

 要約では、Seralini et al. (2007)は、同一個体の体重の連続した週次の測定値間の経時的自己相関を説明していない。さらに、群間の体重の平均値のカーブの検定を目指しているが、この方法では群内のラットの個体ごとの体重のばらつきを説明していない。・・・など検定結果に擬陽性が出やすい理由を列挙している。

 おそらく、標準的でない解析方法の欠点の列挙にあまりつっこんで詳細を読んでも、私にもきっと理解できないでしょう。一方、 EFSAは自身の手でモンサントのデータを再解析しており、その手法を自ら"modern sophisticaed statistical methodology, capable of detecting even small differences."と評しています。(one-way ANOVA and linear mixed model approach, 一元分散分析と混合線型モデルですが・・・。)

# これはいい!拝借しよう。

 その解析の結果、結局、処理区間の体重に有意差はない、量的な効果もない、投与量と他の要因との相互作用もない、 12週目の雄の体重を除いてGMとコントロールの差は無作為な偏差と一致する等。結局、統計的にこれといった有意差は出ないとのこと。

 このほか、生化学的指標や尿検査、組織病理、器官重量についてもcriticalに検証しています。こちらは統計的な有意差があれば、その裏付けとしなる生物学的な有意な違いについても評価すべし、というEFSAの原則的な方針を強調しています。

 結局、この点ついてSeralini et al. (2007)は、以前のEFSAのGM panelの評価やモンサントの申請書中の報告と変わりないとのこと。

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 結局は大山鳴動鼠一匹。 さて、EFSAの大部な報告書を余所に、我が国の食品安全委員会の専門調査会はどのようなユニークな検証、あるいは再解析を見せてくれるだろうか? 一種楽しみである。

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