まずはこの7月4日付の恥ずかしいプレスリリースを見てやってほしい。

遺伝子組み換えトウモロコシMON863の即刻回収を!

--グリーンピース食品安全委員会厚生労働省農林水産省に要求

http://www.greenpeace.or.jp/press/releases/pr20070704_html

以下、私なりにこのプレスリリースの事実関係を解読する。(赤文字の部分は、私から見て事実誤認があると考えられたため、勝手に修正しています。


米国大手農薬会社モンサント社の開発による遺伝子組換え殺虫性トウモロコシMON863は、今年3月、フランス・カン大学などの専門家チームの研究により毒性の兆候が否定できないとされ、その研究論文が米国専門誌( Archives of Environmental Contamination and Toxicology )に発表された

論文では、モンサント社の行ったラットを使った実験の結果を再解析するとMON863は肝臓と腎臓への毒性作用の可能性があることが否定できないとしている

日本の食品安全委員会はこの研究論文に対し、第47回遺伝子組換え食品等専門調査会(2007年4月16日)検討を行い、引き続き審議を行なうとしている。日本では、MON863は2002年食品と飼料への使用が認可されている。したがって、MON863が現在流通している食品に使用されている可能性もある。

なお、MON863の安全性については、欧州食品安全委員会の専門家委員会がモンサント社の行ったラットを使った実験の結果を再評価した2007年6月28日付公表の報告書があり、何ら問題ないとしている。また、上記のフランス・カン大学などの専門家チームの論文については、統計の専門家によって再評価されており、論文で行った統計的検定の前提条件は不適切であり、適切な手法で検定した場合よりも統計的な有意差が出やすいと報告されている

現時点では、グリーンピースがMON863の回収要請の科学的根拠としている論文については、欧州食品安全委員会から解析手法が不適切であるとされており、日本でも2002年に行われた食品安全委員会の適正なリスク評価の結果MON863は特に問題ないとされており、現在流通して食品に使用されていたとしても、何ら問題はない。仮に、 MON863を回収するべきであるとしたら、それは食品安全委員会で上記の論文を再評価し、 MON863の安全性に問題があると判断された場合のみである。

次に、


グリーンピース・ジャパン遺伝子組み換え問題担当の棚橋さちよは語り、「現行の安全性評価を早急に見直し、長期間の摂取を含めた安全性の審査が確立するまで、すべての遺伝子組換え食品に対する認可の停止をすべきである」と訴える。

さて、日本の食糧自給率はカロリーベースで約40%である。自給率の低いトウモロコシや大豆は95%以上を輸入に頼っている。

  • 現行の安全性評価に問題があって
  • なおかつすべての遺伝子組換え食品に対する認可を停止する

としたらどうなるか?たとえば大豆を例に取ると

  1. 流通している大豆の96%は輸入大豆だ。
  2. そのうちアメリカから輸入されてくる大豆は、全輸入量の80%を占める。
  3. アメリカで作付けされている大豆の90%は遺伝子組換え大豆だ。
  4. 従って0.96 x 0.8 x 0.9 →国内で流通している大豆の70%位は遺伝子組換え大豆だ。

政府がこの流通を禁止したら、不足分(概ね290万トン)を非遺伝子組換え大豆で調達できる見通しはないので、間違いなく社会的な混乱が起きる。もっとも味噌、豆腐などの食品用に使用される大豆は100万トンほどで、分別流通されており、無分別の大豆は主に食用油用にふりむけられる。

トウモロコシについても、アメリカから輸入されているものは家畜飼料にも使われているが、仮にそれまで止めると、農家も巻き込んだ大混乱が起こるだろう。彼らは、そこまで考えて発言しているのだろうか?

仮にそうなってもグリーンピース・ジャパンは、当然のことながら一切責任を取ることはないし、その能力もない。