ミートホープ事件結審

北海道新聞より。

 



 


ミート社偽装 田中被告に懲役4年 札幌地裁「食の安全脅かす」(03/19

13:43)


 苫小牧市の食肉加工製造卸会社「ミートホープ」(破産手続き中)の食肉偽装事件で、
詐欺と不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪に問われた元社長田中稔被告(69)=苫小牧市船見町二=の判決公判が十九日、
札幌地裁で開かれた。嶋原文雄裁判長は「会社と自己の利益を計るため、食の安全への信頼を根幹から揺るがした背信的な犯罪」として、
懲役四年(求刑・懲役六年)を言い渡した。

 食の安全、安心を脅かし、食品の表示偽装が各地で表面化するきっかけとなった事件で、
判決は田中被告の刑事責任を厳しくとらえ実刑とした。

 判決理由で嶋原裁判長は、一九七六年のミートホープ設立から数年後に食肉偽装が始まったと認定。
牛肉以外の肉を混ぜたことについて、「田中被告が長年の経験を悪用し、犯行を主導した。昨今みられる食品偽装の中でも大胆さ、
悪質さは際だつ」と述べた。

 また、田中被告が公判で、「(安い肉がほしいとの)取引業者の要望を断りきれなかった」
「安価でおいしい製品を工夫して供給しようとしたため」などと、偽装を繰り返した動機を供述したことに、嶋原裁判長は
「自らが社会に及ぼした影響に対し、悔悟や罪の意識が乏しい」と非難した。

 弁護側は、田中被告とミートホープが自己破産し、社会的制裁を受けていることなどから、
執行猶予を含む寛大な判決を求めていた。

 判決によると、田中被告は二〇〇六年五月から○七年六月にかけて、
三百二十七回にわたり牛肉に豚肉などを混ぜて製造したミンチ肉に「牛100%」などと表示し、
取引先十数社に約百三十八トンを販売した。このうちの約百トンを納入した北海道加ト吉赤平市)など三社から、
代金約三千九百万円をだまし取った。

 



 

さて、判決理由には「食の安全捨てた
と言う言葉は使われていないようだな。とすると、この見出しはおかしい。理由は後述する。もう一つ、中国新聞から判決要旨。

 



 



食肉偽装事件の判決要旨 札幌地裁



 食肉加工販売会社「ミートホープ」の食肉偽装事件で、元社長田中稔被告に対し、札幌地裁が19日言い渡した判決の要旨は次の通り。

 田中被告はミートホープ設立当初、肉加工の際に出るくず肉の処理に困り、
設立数年後には、牛のほかに豚や羊のくず肉を混ぜた牛ひき肉の製造を始めた。本件各犯行は、
同社で行われていた偽装行為の一環だ。

 被告は取引業者や最終的に食品を口にする一般消費者を顧みず、
偽装が容易なひき肉を利用し、安価な原材料費で多額の売り上げを得て、会社や自分の利益を図ろうとした。動機は極めて利欲的、
自己中心的で、厳しい非難を免れない。

 牛肉に豚肉、鶏肉、羊肉などを加える犯行は大胆で悪質さは際立っている。
昨今の食肉偽装の中でも、原産地偽装などの事案とは一線を画す。偽装表示、詐取行為は長期間、多数回にわたって繰り返され、
取引業者の信用も傷つけた。

 食肉業界での公正な競争を害したほか、
一般消費者に食品表示に対する不安を抱かせ、食の安全への信頼を根幹から揺るがしたことは明らかで、犯情は非常に悪い。

 本件各犯行は、会社ぐるみの大規模かつ組織的犯行であり、
代表取締役の被告が専門知識を悪用し、率先して偽装方法を発案し従業員に具体的に指示するなど、自ら中心となって主導した。

 さらに、被告は犯行の発覚後、
偽装に使用していた豚の心臓などを工場外に運び出して処分し、証拠隠滅を図るなど犯行後の情状も良くない。

 被告は食品の製造・
加工に携わる者として食の安全に関する規範意識が強く求められる立場にありながら犯行を行っていたばかりか、公判で
「取引業者の要望を断り難かった」「工場間取引には表示義務がなかった」などと述べ、
自らの行為や社会的影響を真摯に省みて悔悟する姿勢がない。

 他方で、
ミートホープは偽装牛肉の取引による利益のみに依存していた会社ではなく、捜査・
公判を通じて事実をすべて認め反省の弁を述べているほか、
被告とミートホープはともに破産宣告を受けるなど一定の社会的制裁を受けており酌むべき事情も認められる。

(初版:3月19日12時40分)

 



 

読売新聞、中日新聞でも裁判所の判断は
「食の安全への信頼を根幹から揺るがした」であったと伝えられているので、そうなのだろう。論告求刑の際に、
検察側は『食の安全』を捨てた恥も外聞もない行為
と言ったと伝えられている。
本件裁判では「食の安全」 に関わる食品衛生法違反が裁判の争点になっていないにもかかわらず、
である。どこかズレている。

一方、裁判所はさすがに「食の安全を揺るがした」とは言っていない。
そのかわり「食の安全への信頼を根幹から揺るがした」と言った。
この犯罪が揺るがしたのは「安全」そのものではなく「安全への信頼」だったと。流石に、
裁判の争点になっていないことを判決理由にはできなかったのだろう。

それを知って、私は少しほっとしているところだ。
司法の公正に対する信頼が少し揺るぎかけていたところだったので。

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