ウイロイドはカルタヘナ法では生物です。

 本日頂いたご相談関連。情報共有のために公開いたします(守秘義務違反にならない範囲で)。

Q1. プラスミドに逆転写した植物ウイロイドをクローニング、点突然変異を入れてin vitroで転写させる。
これを植物に接種して機能解析をしたいが、カルタヘナ法上の扱いはどうなる?

A1. カルタヘナ法第2条の定義で、ウイロイドは生物にあたります。しかも、”ウイルス及びウイロイドをいう”として、ウイルスとウイロイドを区別しています。研究二種省令では、別表第1第一号へで自立増殖性のウイルス又はウイロイドの使用を原則として大臣確認に指定しています。ただし、除外規定があって、二種告示別表第3では”4 Plant viruses”と組換え植物ウイルスについては大臣確認は不要としています。

 カルタヘナ法第二条でも二種省令別表第1第一号へでもウイルスとウイロイドを区別していますので、二種告示の除外リスト、別表第3の”Plant viruses”にウイロイドが含まれると言う解釈は、常識的にはできません。従って、自立増殖性の見込まれる組換え植物ウイロイドを使用する実験はあらかじめ大臣確認が必要だと考えられます。

 なお、単一の点変異はナチュラルオカレンスなので遺伝子組換え生物ではないと言う解釈もあり得ますが、解釈権は文科省にありますので、文書で照会するか大臣確認申請をして確認不要の回答をとるか、をしてから実験をすることになるでしょう。いずれにしても機関の判断ですぐに実験するのは危険です。

Q2. pVS1系のバイナリーベクターはプラスミドの伝達性が高いので、「哺乳動物等に対する病原性及び伝達性に関係しない」という二種省令第5条第1号ハの適用はできないのではありませんか?その場合、pVS1プラスミドは実験分類クラス2の緑膿菌由来なので拡散防止措置は二種省令第5条第1号イの適用でP2レベルになるのでは?

A2. 二種省令第5条第1号ハの「伝達性」の解釈については文部科学省からポジションペーパーが示されております。
 それによりますと、二種省令第5条第1号ハの「伝達性」とは、”微生物から動植物等への感染により、微生物ごと伝達する性質又はその程度”であって、”微生物から微生物への接合や遺伝子の水平伝達等により、核酸の状態で(染色体若しくはプラスミドとして)伝達する性質又はその程度”ではないとのことですので、プラスミドとしての伝達性があっても、二種省令第5条第1号ハにより宿主の実験分類に従った拡散防止措置で実験できます。

 ただし、これは供与核酸が全て同定済み核酸の場合に限ります。

 毎日こんな案配と言うわけではありませんが、今日は特にカルタヘナ日和でした。

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